「円周率は無限に続くわけで、そう考えると10兆桁といっても大したことはありませんが、今の時点で私が最も正確な値を持っているわけです。まぁ、別に持っているからといって、どうってこともないんですが、いわば男のロマンです」
と笑うのは長野県飯田市の会社員・近藤茂さん(56)。この度、円周率を10兆桁まで計算し、自らが持つギネス世界記録を更新する快挙を成し遂げた。
使用したパソコンは部品を購入して自作したもので、かかった費用は約200万円。高額になったのは、結果を記録するため2テラバイトという大容量ハードディスクを30台以上も備えたため。自宅2階に特別部屋を用意し、PC熱で40度にも上昇する室温を、2つの扇風機を置いて空気を循環させた。電気代は月3万円もかかったという。
計算ソフトは、ネットで知り合ったアメリカの学生に作成を依頼。あとはパソコンが計算するのをひたすら見守るのみ……と書くと、「な~んだ」と思う人もいるかもしれないが、聞けば確かに大変なことなのだ。
「途中、データを記録していくハードディスクが故障し、何度も計算がストップしました。とくに春先はエラーが頻発し、1歩進んでは2歩下がる状態。そのため5月の連休明けには7~8台のハードディスクを交換しました。夏場は落雷による停電の危険性もあるので、UPS(無停電電源装置)という非常電源と自家発電機も用意。半月に一度は別のハードディスクにバックアップをとりながら計算を続けました」(近藤さん)
書き込みエラーが出るとけたたましいブザーが鳴るため、深夜に叩き起こされること数度。ましてや食品会社のシステムエンジニアというハードな仕事を持ちながら、である。並大抵の根気ではない。
※週刊ポスト2011年11月11日号