「暴力団関係者と知らずに取引契約を交わしてしまったら条例違反なのか」「暴力団にモノを売ったり、一般客と同様のサービスを提供することはアウトか」「どこまで付き合ったら“密接交際者”とされてしまう?」……。一般市民をも規制対象とした暴排条例は、ビジネスや日常生活の場面に影響を及ぼす。では、その「アウト」と「セーフ」の境界線はどこなのか。暴力団対策に詳しい弁護士・高島秀行氏が解説する。
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〈ある営業マンが接待をした後、その接待先が暴排条例に引っ掛かる相手と判明した。その領収書は精算できるのか〉
相手がそうとは知らずに交わした契約はセーフですから、接待後に判明した場合もセーフです。接待とは、あくまでも契約上の取引の対価として行なわれる行為と考えられます。当然、会社側には接待費の精算義務が生じます。しかし、相手が暴力団関係者と知った上で、何らかの見返りを得ようとして、取引の対価に見合わない過剰な接待をした場合はアウト。
〈社内ルールにより、会社は暴力団関係者と疑われる相手との接待費を認めないこととし、営業マンは自腹を切ることにした〉
このような決定の際には取引も中断していると考えられ、当の営業マンと相手の飲食は、会社を離れたプライベートでの付き合いと認められます。都の条例で規制されている「事業者」の定義を外れますからセーフです。
「暴力団員との飲食」を考える上でわかりやすい例は、芸能人でしょう。暴力団関係者と食事をするだけならセーフですが、やがて昵懇になって組の行事に招かれるなど、広告塔として「組の活動を助長」したらアウトです。たとえ一般市民であっても、個人的な付き合いから、いつの間にか組織に取り込まれてしまう可能性があることを、忘れないでいただきたいと思います。
〈暴排条例を意識し、トラブルを未然に防ごうと、契約書に排除条項を入れようとしたが、取引先に「面倒だ」と言われてしまい、交わさなかった〉
排除条項は、条例により努力義務と定められています。勧告や公表、罰則を受けないという意味ではセーフですが、努力義務に違反することになります。企業のコンプライアンス上、導入すべきだと思います。
※SAPIO2011年11月16日号