テレビ記者たちにとって、国民の怒りはまさに馬耳東風なのだ。 消費増税、年金70歳支給という国民の富を収奪するかつてない悪政が着々と進行しているにもかかわらず、彼らはそれを真っ向から批判しない。
テレビが権力の内側にいたのは昔からだが、ここまで露骨に権力擁護に走り、権力側もまた露骨に利益誘導するようになったのは最近のことである。
民放記者が解説する。
「小泉政権時代に政治の“劇場化”が急速に進み、政治家はテレビをフルに利用し、その手法を官僚も取り入れて御用学者、御用コメンテーターへの『教育』を強化した。一方で、テレビの側もあけっぴろげに自分たちの要求を出すようになった」
その要求のひとつが、地デジ化に際して検討されていた電波オークション(※1)潰しであり、クロスオーナーシップ改革(※2)潰しであった。
そして増長しきったテレビ界は、ついに国民のカネにも手を伸ばそうとしている。「テレビ減税」(通信・放送システム災害対策促進税制)の創設だ。
東日本大震災を名目に、テレビ、ラジオ、通信業者の災害用設備新設の法人税優遇(2年間の特別償却)と固定資産税優遇(課税標準を5年間3分の1に圧縮)という図々しい要求である。
ところが総務省は概算要求の税制改正要望にすでに盛り込んでおり、誰も批判報道しないこの改正は、すんなり通る可能性が高い。いうまでもないが、震災でテレビ局だけが特に救済される根拠など本来はない。
【※1】電波オークション/日本では政府が公共財産である電波を恣意的に割り当て既存のテレビ局に無料で免許を与えてきた。それを改め、周波数帯域の利用免許を競売にかけて新規事業者にも電波を開放しようという制度。諸外国では多く導入されている。民主党は2009年のマニフェストで導入を掲げていたものの昨年の電波法改正案からは完全に外された。
【※2】クロスオーナーシップ改革/新聞社が放送業に資本参加するなど、特定の企業が多数のメディアを傘下にして影響を及ぼすことをクロスオーナーシップという。民主党政権誕生時、原口一博総務相(当時)らはクロスオーナーシップ規制の法制化を目指したが、2010年成立の改正放送法では規制強化が見送られた。
※週刊ポスト2011年11月11日号