夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回の報告は、文具メーカー勤務のご主人(47歳)。奥様(47歳)にもハイキングの楽しみを味わわせたいと、夫婦一緒に出かけました。
* * *
前回のハイキングで女房が感激したのは、山道ですれ違う人々が交わす挨拶です。「アスファルトジャングルの都会に住んでいると、隣の家の人とも挨拶を交わさないのが当たり前だったりするのよね。そんな関係と違って、山ではすれ違っただけの見知らぬ人同士が笑顔で挨拶を交わす。ステキだわ!」
翌週は別の山に。ところが、雨予報だったせいか、20分ほど登ってもすれ違う人はゼロ。「せっかく、楽しみにしてきたのにつまんない!」口をとがらせる女房。「アナタ、100mぐらい戻って、そこから登ってきてよ。私が下りていくから、すれ違ったらお互いに『こんにちは』をいい合いっこしましょう」
僕が山を下り、また登っていくと、女房が駆けるように下りてきて挨拶し、「サイコー! アナタ、また100m下りて登ってきて」「わかった」何回か続けていると、「今回は『こんにちは』だけじゃなく、少しアレンジしてみて。チャン・グンソクの物マネで『こんにちは。奥さん、すごくきれいね』っていってみて」「いえない!」「じゃあ、ヨン様で」って、そんなことよりさあ、せっかく20分も登っていたのに、登山道の入り口に戻っちゃったじゃないかよ!
※週刊ポスト2011年11月11日号