「なくて七癖」とはよくいったもので、人には様々な癖がある。だが、中には“病的な癖”もあると語るのは『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)でおなじみの脳科学者・澤口俊之氏だ。澤口氏が解説する。
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ほとんどの人は何らかの癖を持っていると思われますが、なかには病的なものもあります。嘘を平気で頻繁につく虚言癖や盗みを繰り返す盗癖、あるいは、緊張するとお腹が痛くなったり、下痢をしたりする過敏性腸症候群、無意識に自分の毛を抜いてしまう抜毛症などが知られています。
細かいことを気にする癖も度が過ぎれば「強迫神経症」という病気の症状のひとつになります。最近は、収支バランスを考慮せずに買い物を繰り返す買い物癖や、シャワーをするときに多くの製品を使わないと気がすまないシャワー癖も問題になっています。
これらも脳の個性の表れで、遺伝と環境の両方が関与します。癖を生む脳内メカニズムは複雑ですが、病的な癖に共通するのは、「脳の異常」です。
病的な癖の持ち主の脳を調べると、それに関連する脳領域が萎縮していることが多いのです。これは明白な病気ですから、薬物療法による治療が行われますが、脳の萎縮が伴うので、治すのはかなり困難です。虚言癖や盗癖は治療がとくに難しいといわれています。
もちろん癖には、気にする必要もない些細なもののほうが多いと思います。とはいえどんなに些細な癖であっても、脳の使い方の固定が原因なので、いざ治すとなるとかなり難しいことを知っておいてください。
もし自分の癖が人間関係や仕事上でマイナスとなるので治したいという場合は、意識して脳の使い方の固定を代えると治すことができます。その場合、遺伝性が少なく、感情とさほど結びついていない癖のほうが容易です。例えば口癖なら、意識してその言葉を使わないという方法で、脳の使い方の固定を代えることができ、治すことも可能なのです。
※女性セブン2011年11月10日号