ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などにも取り組んでいる。その鎌田氏が、福島県の子供たちの甲状腺検査について報告する。
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この夏、諏訪中央病院のある茅野市とカタログハウスが協力して、1000人の子どもとその母親を白樺湖に招待した。そのとき、希望する子どもたちに健康診断を実施した。
僕が理事長をしている日本チェルノブイリ連帯基金がお手伝いをして、信州大学附属病院で、血液検査と尿検査の健康診断を行なった。受診したのは、生後6か月から16歳までの130人。
現在行なわれている福島県の検査は、エコー検査である。これは本来腫瘍を見つけるのが目的だが、僕らはI131の影響が出ていないかを検査するのが主目的なので、血液と尿の検査をした。今回の検査では、1人が甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン)の基準値を下回り、7人が甲状腺刺激ホルモンの基準値を上回った。
刺激ホルモンの値がさらに高くなれば、甲状腺機能低下症になっていく可能性がある。今のところ病気ではないが、経過観察が必要な状態である。
チェルノブイリでは、甲状腺がんや機能低下症が多発した経緯があり、多項目の検査をしたほうがよいと考えた。腫瘍を見つけるだけのエコー検査だけでよいのだろうか。血液に異常がある子を見つけ、厳重に管理することで腫瘍の早期発見も可能になってくる。
腫瘍が出来るのは、4~10年後の可能性が高い。10月9日の福島県の第1陣の検査を受けた子ども144人に異常は見られなかった。ある母親は「子どもに異常がなくて安心した」と話していたが、いまのエコー検査だけでは異常がなくて当たり前なのだ。
それは検診をやる側も承知しているのだと思う。腫瘍を見つける検診ならば、もっと先でいいと思うが、保護者の放射線に対する不安に対応しなければならないと、前倒しで始めたというのが本音だろう。
※週刊ポスト2011年11月11日号