アップル社の創設者・スティーブ・ジョブズ氏が10月に他界したが、彼が遺した革新的な商品の愛好家は、日本にも数多くいる。その中の1人、明治大学教授の江下雅之氏は、Macintosh II(1987年)の思い出をこう語る。
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思い入れの深いマックといえば、ジョブズが一度アップル社を去った直後に発売されたMacintosh II。メモリが1MB、ハードディスクが40MB内蔵と、当時主流だったMS-DOSマシンを上回るハイスペックさがウリで、106万円もしました。
ただ、当時の僕はスペックよりもPC内部のデザイン性に感動しました。メモリを増設しようと思って本体の蓋を外すと、ドライブやCPU、メモリが実にシンプルに配置されていた。他社の製品なら半日はかかるのに、30分でできてしまって、そうなるとなんだか愛着も湧いてくる。ジョブズがシンプルさにとことん固執した逸話はよく知られていますが、それはデザインが人に及ぼす影響を誰よりも理解しているからだったのでしょうね。
【プロフィール】
江下雅之(えした・まさゆき)1959年生まれ。東京大学理学部数学科卒。シンクタンク勤務を経て、現在は明治大学情報コミュニケーション学部教授。ビンテージMacの収集家でもある。著書に『ネットワーク社会の深層構造』(中央公論新社刊)など。
撮影■西田航
※週刊ポスト2011年11月11日号