東京電力の電気料金算定のもととなるコスト見積りが6000億円過大だったことが判明し、電気料金が必要以上に高く設定されていたのではないかと囁かれている。日本の電気料金は世界標準よりも倍高いが、大前研一氏は、「これを半額にする方法がある」という。
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日本の電気料金は電気事業法に基づき「総括原価方式(※)」で計算されている。しかし、このやり方だと東電の都内最大級のグラウンドや豪華な従業員施設なども全部コストに含まれてしまうので、今回のような会計検査院的な調査では、世界標準の2倍の23円/kWhという高さになっている日本の電気料金の本質的・構造的な問題にメスを入れることはできないのである。
では、電気料金を半分にするためにはどうすればよいのか? 「発電」「送電」「配電」を分離し、規制撤廃を行なって発電部門に競争原理を導入するしかない(ただし、原子力発電所を継続するならすべて国営化する)。
今は地域独占の電力会社が発電・送電・配電を“一気通貫”で担っている。そのうち発電部門に関しては参入を自由化するのだ。安全規制や環境対策については、日本企業も外国企業も同じ基準を適用して競争条件を公平にする。
そうすれば、カタールの会社が日本に自前の発電所を建設してLNGを持ちこんで発電したり、ロシアがサハリンで発電して送電ロスの少ない直流高圧送電を敷いて日本に供給したりするだろう。その結果、おそらく日本の電気料金は10円/kWh以下になり、今後の「脱・原発」に伴う電力不足の懸念も解消されると思う。
一方、送電部門と配電部門は、それぞれ集約したほうがよい。まず、地域分断された電力会社間の、とくに東西の周波数を越えた融通がほとんどできていない送電網は、日本全国を一本化して公営化すべきである。
そして将来的には、東西で異なる周波数をEUのように統一し、日本全国で融通がきくようにしなければならない。なぜなら、日本の場合は事実上の時差が1時間半もあり、南北の気温差も大きいからだ。
つまり、九州の人が寝ている時に北海道の人が起きてくるので、ピークの電力需要は1日の間に日本列島の北から南へ徐々にずれていく。また、冬季の電力使用量は北の寒冷な地域で大幅に増え、南の温暖な地域ではさほど増えない。夏季は逆になる。日本全国の送電網を一本化して周波数を統一することで、北が足りない時は南のキャパシティを、南が足りない時は北のキャパシティを使えるようになるわけだ。
(※)発電から電力販売にかかわるすべての費用をコストに含め、それに一定の利益を上乗せして電気料金を決める方式。
※週刊ポスト2011年11月11日号