国内

東電の料金算定法では運動場や従業員施設も発電コストに認定

東京電力の電気料金算定のもととなるコスト見積りが6000億円過大だったことが判明し、電気料金が必要以上に高く設定されていたのではないかと囁かれている。日本の電気料金は世界標準よりも倍高いが、大前研一氏は、「これを半額にする方法がある」という。

* * *
日本の電気料金は電気事業法に基づき「総括原価方式(※)」で計算されている。しかし、このやり方だと東電の都内最大級のグラウンドや豪華な従業員施設なども全部コストに含まれてしまうので、今回のような会計検査院的な調査では、世界標準の2倍の23円/kWhという高さになっている日本の電気料金の本質的・構造的な問題にメスを入れることはできないのである。

では、電気料金を半分にするためにはどうすればよいのか? 「発電」「送電」「配電」を分離し、規制撤廃を行なって発電部門に競争原理を導入するしかない(ただし、原子力発電所を継続するならすべて国営化する)。

今は地域独占の電力会社が発電・送電・配電を“一気通貫”で担っている。そのうち発電部門に関しては参入を自由化するのだ。安全規制や環境対策については、日本企業も外国企業も同じ基準を適用して競争条件を公平にする。

そうすれば、カタールの会社が日本に自前の発電所を建設してLNGを持ちこんで発電したり、ロシアがサハリンで発電して送電ロスの少ない直流高圧送電を敷いて日本に供給したりするだろう。その結果、おそらく日本の電気料金は10円/kWh以下になり、今後の「脱・原発」に伴う電力不足の懸念も解消されると思う。

一方、送電部門と配電部門は、それぞれ集約したほうがよい。まず、地域分断された電力会社間の、とくに東西の周波数を越えた融通がほとんどできていない送電網は、日本全国を一本化して公営化すべきである。

そして将来的には、東西で異なる周波数をEUのように統一し、日本全国で融通がきくようにしなければならない。なぜなら、日本の場合は事実上の時差が1時間半もあり、南北の気温差も大きいからだ。

つまり、九州の人が寝ている時に北海道の人が起きてくるので、ピークの電力需要は1日の間に日本列島の北から南へ徐々にずれていく。また、冬季の電力使用量は北の寒冷な地域で大幅に増え、南の温暖な地域ではさほど増えない。夏季は逆になる。日本全国の送電網を一本化して周波数を統一することで、北が足りない時は南のキャパシティを、南が足りない時は北のキャパシティを使えるようになるわけだ。

(※)発電から電力販売にかかわるすべての費用をコストに含め、それに一定の利益を上乗せして電気料金を決める方式。

※週刊ポスト2011年11月11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン