韓国にとって最大の反日テーマとなっている慰安婦問題。いまや彼女たちは独立の功労者のような扱いになっているという。産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏がレポートする。
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韓国では、日本統治時代の昔、抗日独立運動など日本の支配に抵抗した経歴のある人を「独立有功者」として顕彰している。政府に届けている元慰安婦の老女たちも似たような処遇を受けている。政府が生活支援をしているほか、亡くなると必ず顔写真付で経歴を紹介した死亡記事も出る。元慰安婦の老女たちは、支援団体とマスコミによって今や「独立有功者」並みになってしまったのだ。
元慰安婦の老女たちは、反日・抗日の功労者つまり「独立有功者」の役割をさせられてきたというわけだ。
「チョンデヒョプ(挺対協=挺身隊問題対策協議会)」など慰安婦支援団体は、その反日運動の象徴的建造物として以前から「記念館」と「記念碑」の建設計画を進めてきた。その目標がソウルの日本大使館前での「水曜デモ1000回」(1990年代以来毎週行われてきたデモ)の今年なのだ。
ところがまず、ソウルの旧西大門刑務所跡の独立運動記念公園に建てようとした記念館構想が頓挫した。独立運動関連団体に反対されたからだ。
日本の支配と戦った「光復会」などからすると「慰安婦がなぜ独立運動と関係あるのか」というわけだ。「挺対協」の機関紙にも「(運動の過程で)わが民族の恥をなぜ自慢そうにマスコミに広めるのか」と言った抗議や反対に直面した、とある。
「慰安婦記念館」は結局、場所を移し街はずれのさる場所に決まったが、支援団体としては今度は「何としても“記念碑”でガンバラなくっちゃ!」とばかり、こちらは日本大使館前の路上に建てることになった。
「日本大使館前に反日記念碑」とは、大胆不敵かつ国際的に前代未聞だ。
世界各地で反米運動があるが、米大使館前に反米記念碑などどこにもないだろう。反日では時に韓国以上に激しく厳しい中国でもそんな発想はない。
路上の建造物は地元の鍾路区役所の許可だが、認める方針という。外交的配慮も国際化時代もあったものじゃない。日本大使館は舞台裏で阻止工作に懸命だが、韓国政府(李明博政権)が政治的外交的配慮に動くかどうかだ。
日本大使館前に反日・慰安婦記念碑など何とも品がない。阻止に失敗すれば駐韓日本大使は本国召還ものだろう。
慰安婦問題では最近、韓国の憲法裁判所が支援団体などの訴えを受け入れ「政府が日本に補償交渉をしないのは人権無視」と判断したため、支援団体は意気上がっている。早速、韓国政府は日本に協議を要請したが、過去にかかわる対日請求権は1965年の日韓国交正常化条約に「完全かつ最終的に解決された」と明言されている。
「対日請求権資金は政府がまとめて受け取ったので個人補償は韓国政府に要求してほしい」といえば済む話なのに、それがいえずにまた日本に話をもってくるといういつもの図式だ。あんなに豊かになった韓国なのに。
※SAPIO2011年11月16日号