夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回の報告は、ご主人(53歳)が生保勤務の奥様(54歳)。ご主人の座右の銘は「転ばぬ先の杖」だそうです。
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「山道でお前が歩けなくなった時のために、脚力をきっちりと鍛えあげておく必要がある」と主人。「杖」になるのは「脚力」だというわけで、登山専門のスポーツ店で買ってきたのは、片方の重さが1kgもあるキャラバンシューズです。「通勤にもこの両足で2kgの靴を履いていく。ダンベルで腕を鍛えるのと同じで、足が強くなるぞ。1か月待て。山道などスイスイだ! オレと紅葉を見にいこう」
1日目、出勤する主人を玄関で見送り、中に入ろうとすると、「ドサッ!」大きな物が倒れる音と「いっ痛い!」と主人の声が。振り返ると、庭の敷き石の段差に蹴躓き、転倒した姿が。「ダメだ! 靴が重くて足が上がらない!」『忠臣蔵』松の廊下の浅野内匠頭のように、摺り足でしか歩けない主人。
あァ、やっぱり座右の銘は生きていたわね。アナタには靴で転ばぬためにも、やっぱり杖が必要みたい。
※週刊ポスト2011年11月11日号