福島原発事故以来、再生可能エネルギーへの関心が高まっているが、大前研一氏によれば、「再生可能エネルギーを税金ゼロで普及させる方法がある」という。「発電部門は自由化、送配電は一本化した方が良い」という大前氏が、再生可能エネルギー普及について解説する。
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発電部門に競争原理を導入すると、高コストの再生可能エネルギーは成り立たなくなるので、国の政策的なバックアップが必要となる。たとえば、ドイツやスペインなどで導入されているフィードイン・タリフ(固定価格買い取り制度)。これは電力会社に対し、自然エネルギーで発電された電力を一定期間、有利な固定価格で全量買い取ることを法律で義務付け、自然エネルギーの利用拡大を図る制度である。
風力発電や太陽光発電などを設置した家庭や事業者は、発電設備の設置費用を早く回収でき、採算性の見通しが立てやすくなる。ドイツは太陽光発電を促進するために2000年からフィードイン・タリフを導入し、通常発電の2倍以上の価格で20年間買い取ることが保証されている。
この方式なら国は制度を作るだけで、補助金などで税金を使わず、民間資金によって再生可能エネルギーの普及を促進することができる。ただし、買い取りにかかるコストは電気利用者全員で負担することになり、風力発電や太陽光発電の割合が増えれば、加重平均でこれまでより電気料金が高くなるのは避けられない。
もう一つのやり方は、ニュージーランド方式だ。これは火力発電、水力発電、地熱発電、太陽光発電、風力発電など発電方法別の電気料金リストを示し、ユーザーは自分が応援したいものを選ぶ、というものだ。もともとニュージーランドは環境問題の教育レベルが高いので、電気料金が高くても再生可能エネルギーを選ぶ人が意外に多い。
この方式のデメリットは、待っていても再生可能エネルギーの比率が上がるかどうかわからないことだ。景気が悪化したら、みんな料金の安い火力発電に鞍替えするかもしれない。面白い考え方ではあるが、電力インフラというのは数十年単位で投資しなければならないものだから、日本の場合は、フィードイン・タリフ方式で次第に再生エネルギーの比率を高めていく方法が適しているだろう。
発電を競争にさらした上で、このようなやり方を導入すれば、税金を使わずに再生可能エネルギーの比率を高めながら、電気料金を安くすることが可能になる。
※週刊ポスト2011年11月11日号