「暴力団関係者と知らずに取引契約を交わしてしまったら条例違反なのか」「暴力団にモノを売ったり、一般客と同様のサービスを提供することはアウトか」「どこまで付き合ったら“密接交際者”とされてしまう?」……。一般市民をも規制対象とした暴排条例は、ビジネスや日常生活の場面に影響を及ぼす。では、その「アウト」と「セーフ」の境界線はどこなのか。暴力団対策に詳しい弁護士・高島秀行氏が解説する。
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契約書を交わすような取引であれば、排除条項を入れることが、暴排条例に違反しないための有効な防衛策になります。しかし、いちいち契約を交わさないような取引の場面では、アウトとセーフの境界線を判断するのはより難しいと言えます。以下、想定される例をいくつか解説します。
〈居酒屋が、飲みに来た暴力団員を接客した〉
この場合、少人数で、他のお客さんに交じってカウンターやテーブル席で飲んでいるならセーフ。しかし、数名から数十名の団体で、個室に入った時点でアウトになる場合があります。個室に団体で入った時点で暴力団の会合と見なされ、その「活動を助長する」恐れがあるからです。この時の境界線は「人数」と「個室か否か」。
他にも、仕出し弁当の配達やスーパー、コンビニ、デパートなどの小売業でも、「大量発注かどうか」が見極めるポイントになります。
〈印刷業者が名刺や挨拶状の印刷を請け負った〉
暴力団の名刺や挨拶状には、肩書の他、代紋や組織名が入っていることが考えられるのでアウト。組織名や肩書が、暴力団の威力を示すものであり、これを印刷することは、まさに活動を助長すると言えます。一方、これらが入っていなければ、単なる個人の名刺なのでセーフです。
〈ホテルが、予約を受けた時点では暴力団と知らずに宴会場を提供した〉
本来、予約の時点で相手がそうでないことを確認する旨が、事業者の努力義務として求められています。しかし、この確認をしなくても「知らなかった」はセーフ。相手に「暴力団ではありません」と騙られた場合もセーフです。さらに、宴会が始まった後など、契約の途中で暴力団と判明した場合、条例上はそのまま継続してもセーフです。企業や業界によっては、途中でわかったら、宴会中でも中止して出て行ってもらう旨を宣言していますが、これは自主規制の一環です。
※SAPIO2011年11月16日号