糖尿病の合併症である糖尿病黄斑浮腫が増加し、働き盛りの視力障害の大きな原因の一つとなっている。従来は光凝固と硝子体手術が標準治療だったが、血管新生阻害薬(抗VEGF薬)が新しい治療として登場した。
薬剤を眼球に注射するだけで効果が得られるが、奏功期間が短く、再発した場合は再度注射する必要がある。外来治療が可能で、初期から使える治療として期待されている。
国内の糖尿病の患者は、予備軍を合わせると約2210万人いると推計されている。糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の一つで、高血糖による代謝異常が起こり、網膜の中央にある黄斑に浮腫などが生じることで視力障害が起こる合併症だ。
網膜症は働き盛り世代の失明原因の第2位であり、QOL(生活の質)が著しく低下するだけでなく、就業機会を失うこともある。最近はテレビや新聞の文字が見えないなど、中等度の視力障害を起こす糖尿病黄斑浮腫が増加傾向にあり、糖尿病患者の約10%に上るとみられる。
九州大学病院眼科の石橋達朗教授に話を聞いた。
「糖尿病網膜症は、網膜血管の透過性亢進(水漏れ)が起こる単純網膜症から、血管閉塞が生じる増殖前網膜症を経て、最終的に新生血管が生じる増殖網膜症へと病態が進みます。初期の単純網膜症の時期にも、糖尿病黄斑浮腫は発症します」
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2011年11月11日号