携帯電話向けゲームサイト「Mobage(モバゲー)」を運営するDeNA(ディー・エヌ・エー)がTBSホールディングスからプロ野球の横浜ベイスターズを買収することが4日、発表された。注目された球団名は「横浜DeNAベイスターズ」が予定されている。
この球団名に至るまでは、紆余曲折があった。
DeNAは「モバゲー」を球団名に使いたい意向を持っていた。しかし、一部の球団がこれに反発したことから、一時は社名を「モバゲー」に変更する可能性も示唆。巨人の渡辺恒雄会長も10月31日、社名を変更した上であれば、「モバゲー」を使用しても問題ないとの考えを明らかにしていた。
しかし、社名変更には2012年6月の株主総会での承認が必要で、それまでは暫定の球団名を使わなければならない。他球団の反発が予想されるほか、新たな球団としてファンの支持を集めるには、早めに球団名を決めたほうが得策との考えもあったとみられる。
DeNAが、一時は社名を変えることまで考え、球団名に「モバゲー」を使用することにこだわったのはなぜか?
「モバゲーをいれたほうが、はるかにメリットがあるからです」と指摘するのは、経営評論家の平野和之氏だ。
「会社は誰のものかということがよく議論になりますが、会社はステークホルダーのものなんですね。ステークホルダーとは利害関係者のこと。つまり、従業員もしかり、取引先、株主、顧客もしかりです。球団のステークスホルダーには、ファンも含まれます。このステークホルダーに対して、社名とサービス名が同じほうが、企業のコーポレートアイデンティティ(CI=特徴や理念などを簡潔に表したもの)をより浸透させやすいということは、経営学的にも証明されています」(平野氏)
実際、4日の会見でDeNAの春田真会長は、将来的に社名や球団名に「モバゲー」を使用する可能性について「CIという観点から、どうすべきか考えないといけない」と語っている。
平野氏によれば、とくにネット系の企業では、企業名=サービス名のほうがその効果が高いという。
「広告収入が収益源になっているインターネット企業が多くありますが、その収入を増やすためには、サイトの知名度をあげる必要があり、多くのユーザーを抱える必要があります。つまり、インターネットサイトは、そのサイトがどれだけ知名度があるのかで収益が決まるといっても過言ではありません。
DeNAの場合、海外でもモバゲーという名前でサービスを展開していますし、球団名にモバゲーを入れればその知名度をさらに高めることができる。社名とサービス名が同じほうが、インターネットサイトにユーザーを呼び込みやすく、広告収入を増やしていくうえでもメリットがあるのです。DeNAにとって、横浜DeNAベイスターズという球団名は本意ではなかったでしょうね」(平野氏)
ともあれ、2004年のソフトバンクによるホークス買収以来の球団譲渡で、“新球団”が話題を集めるのは確実で、ベイスターズをモバゲーなどのサービスにどう生かしていくかも注目される。今後は9日に、プロ野球実行委員会で審査し、12月1日のオーナー会議で4分の3以上の承認を得られれば、正式に新球団が誕生する。