円高は日本のピンチなのか、チャンスなのか。国際金融アナリストで、『円高は日本の大チャンス』の著者・堀川直人氏は、「円高悲観論」は幻想にすぎず、逆に円高を利用して雇用も増やせるチャンスがあると指摘する。
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円高を逆手に取って、近年日本が抱えている問題を一気に解決することは可能だ。総務省「労働力調査」によれば、今年8月の完全失業者数は276万人。仕事に就いていても、年収100万円未満の非正規社員は2010年の平均で804万人にも上り、これも“隠れ失業者”だ。
さらに大幅に円高が進めば、製造業が海外生産比率をより高める可能性がある。企業はコスト競争力を維持できるが、国内雇用は減らざるを得ない。私の予測では、欧州の信用不安問題は根強く、時期は明確に指摘できないが、1ドル=70円近くまで円高が進む可能性がある。とすれば、これ以上の雇用の喪失を防ぎ、雇用を拡大することは喫緊の課題である。では、どうしたらいいか。
手っ取り早い方法は、オンリーワン技術を持つ海外の企業をM&A(企業の合併・買収)で買うことだ。それを国内に移植し、そこに従事する労働者を増やせばいい。円高によって上がった購買力を、技術の希少性を高めるための企業買収にこそ生かすべきなのだ。
ただし、M&Aはリスクも大きい。一企業だけでリスクを取りきれないことも多いだろうから、国も一部リスクを取って官民一体となった海外M&Aファンドを立ち上げてもいい。企業のインセンティブを高めるのだ。そのようにして日本にオンリーワン技術が増えれば、日本経済の基盤はますます強化され国内雇用も増えるだろう。
※SAPIO2011年11月16日号