現在視聴率好調のドラマ・『南極大陸』(TBS系)の時代から約55年。この間の極地観測には、のべ49人にのぼる女性の活躍があった。
ドラマ『南極大陸』のころとは違い、「昭和基地には快適な生活環境が整っている」と元女性隊員たちは口を揃える。基地には食堂やサロンなどが集まった管理棟と、隊員たちが寝泊まりする居住棟がある。
居住棟には、男性隊員用に各3畳半ほどの個室がある。冬より参加人数の多い夏の男性隊員たちは収納スペースもない4人部屋で寝起きするが、女性隊員は夏でも6畳ほどの個室が与えられる。
夏隊員として海上保安庁から2006年と2007年に連続で観測隊に参加した中川綾さん(33)の話。
「女性用の部屋の床はフローリング、ベッドに机にクローゼットもあって、とにかく収納は充実。無線LANもあってメールもネットも大丈夫です」
部屋にお風呂はついていないが、浴室にはちゃんとバスタブもある。施設内は空調がきいていて、電気も水も使える。水は南極の氷を溶かしてつくったものだ。重力の観測のために2000年(第42次)と2006年(第48次)の2回越冬した岩野祥子さん(36)もこういう。
「洗濯機があって、洗濯物は発電機のそばに干しておくとカラカラに乾きます。発電機の廃熱を効率的に使って、床暖房もするし、雪を溶かして氷も作ります。施設内はすごく効率的になっていますね。室内はだいたい20℃になっていて、半袖でも過ごせるくらいです」
施設内には娯楽用にカラオケやマージャン卓、映画のDVDや古いフィルムの映写機などもある。越冬隊の食事に関しては、専門の料理人がいる。
「洋食中心と和食中心のふたりのプロのコックさんがいて、朝昼晩、全部作ってくれます。記念日やお祭りのときにはキャビアとかフォアグラとか、日本で食べたこともないようなものも食べました。ただ、生鮮食品は最初だけで、野菜もすべて冷凍もの。生野菜が恋しくなりましたね」(岩野さん)
ちなみにドラマでは樺太犬が活躍するが、現在は環境保護のために動物の持ち込みは禁止。移動も犬ぞりではなく、雪上車やヘリを使う。
「環境保護のために、ペンギンは5m、アザラシは15m以内に近づいてはいけないんです。人間が近づくと南極にはないウイルスや細菌を与えることになってしまうので。ペンギンなんかはいっぱいいるし、基地で作業しているとあっちから近づいてくる。天敵がいないのでまったく警戒もなく、“なんだこの人たち?”って感じで。生まれたばかりのベビーペンギンなんかかわいくて抱き上げたいくらいなんですけど、駄目なんです」(岩野さん)
※女性セブン2011年11月17日号