日本では、出生に占める35才以上の母親の割合が年々増加している。厚生労働省の人口動態統計から算出すると、1970年は4.7%だったが、2010年には23.8%に増加。第1子を35才以上で産む高齢初産婦も17.1%で、1970年の8倍以上に伸びている。産科医・性科学者の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語り合った。
熊田:そもそも何をもって「高齢」出産なんですか?
宋:そうですねえ、いわゆる出産適齢期というのは20才から35才なんです。日本産科婦人科学会は35才以上の初産婦を「高齢出産」と定義してますけど、35才から突然リスクが上がるわけじゃなくて、30才を過ぎたころから徐々に上がっていきます。
50才以上で閉経した女性が妊娠出産することを「超高齢出産」なんていったりもするんですよ(※日本人の閉経年齢の平均は50才前後。医学的には、閉経した女性でも卵子提供を受けるなどすれば出産は不可能ではない)。実際は50才以上の妊娠は不妊治療を駆使しても難しいことが多いですけどね」
熊田:日本は超高齢社会であるのに、超高齢出産まであるんですね…。具体的なリスクはどんなことがありますか?
宋:一般的には、不妊、流早産、多胎(双子以上の妊娠)、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病など妊娠時にかかるさまざまな病気、出産時のトラブル発生などのリスクが上がってきます。先天異常、特に染色体異常でダウン症のお子さんが生まれる確率も上がってきますね。帝王切開や、なかなか子宮から下りてこない赤ちゃんを引き出す吸引分娩になるケースも増えます。
熊田:そうですよね…。よく考えたら、若いころに比べて体力やさまざまな機能が衰えていってるわけだから、卵子も老化していくわけなんですよね。性教育ではそういうことこそちゃんと教えてもらいたかったです。うう~、やっぱり早く産まなきゃ…。
宋:まあまあ、ちょっと落ち着いて。あんまり思い込みすぎないでほしいのは、若い妊婦さんだって妊娠・出産にはこれまで話してきたみたいなリスクがあるんですからね。染色体異常だって、20才未満の母親から生まれた場合でも1000人に1人はいます。ただ40才以上になると60人に1人と確率は上がります。
日本の場合、2009年の第1子の平均出産年齢は29才で、そもそも若い世代の出産件数のほうが多いこともありますが、ダウン症のお子さんのお母さんたちの集まりなどに参加すると、“高齢”ではない若いお母さんがたも多いですよ。それよりも、若くても、妊娠中の飲酒・喫煙、ダイエットしすぎ、妊婦健診を受けないといったお母さんのリスクのほうがずっと怖い気がしますけどね。
※女性セブン2011年11月17日号