10月16日、オリンピック柔道で連覇を成し遂げた内柴正人の出身地である熊本県合志市の主催で「内柴正人旗少年少女柔道大会」が予定されていた。ところが、内柴はこの大会をドタキャンしたうえ、さらに指導に当たっていた九州看護福祉大学柔道部が出場した10月中旬と下旬のインカレの大会にも姿を現わさなかった。同時期に「内柴一家の秘密の扉」という本人のブログから全ての文章が消されている。
こうしたことが、柔道教室の父兄や柔道関係者の間に広まり、様々な噂が飛び交う事態を招く。取材中には、次のような噂を耳にした。
「柔道部にひとりだけ、特別にかわいい女の子がいたんです。内柴さんはその子と何かあったらしいのだが、その子が未成年だったため、親が怒って大学に乗り込んだらしい」(地元の住民)
「内柴以外にもう一人のコーチも大学から自宅待機を命じられているようだ。未成年の部員も含めて皆で酒を飲み、酔っ払ってセクハラまがいの行為をしてしまった」(大学関係者)
「内柴は現在、弁護士を雇って、女性と示談交渉に当たっていると聞いた」(柔道関係者)
果たして真相は――大学事務局に取材したところ、
「いわゆるセクハラ的な行為があったのではないか、という話が出ています」
と認めたうえで、こう説明した。
「仮にそうした行為があったとしたら、被害者もいることですし、慎重に調査する必要がある。そこで学内で調査委員会を立ち上げ、現在、調査中です。公にするか、学内での処罰などに該当するかは、調査の結果を受けて判断することになります」
このため、大学側は現在、内柴や女性側から話を聞いている。また、内柴は現在、自宅待機を命じられており、大学で受け持っている講義や柔道部の指導もできない状態になっている。まずは内柴同様、自宅待機を命じられているという女子柔道部のコーチを電話で直撃した。
「大学からは11月一杯まで自宅待機といわれている。だから、調査委員会の動きも分からないんです。学生には『ちょっと待ってろ』といってあるんですが、早く部に戻りたいんです」
と答えたが、内柴に関することを聞くと、態度が途端に硬化した。
――内柴は未成年に酒を飲ませたのか。
「……ああ、させた」
――性行為に及んだのか?
「……まぁ、そこはいわないです」
――あなたもそこに同席していたのか?
「なんでいわなくちゃいけないんですか」
そういうと、電話を切って、その後は何度掛けても繋がらなかった。続いて本誌記者が内柴の自宅を訪ねると、ベランダにはウエットスーツが干され、広い庭には子供の滑り台や自転車が置かれている。自宅待機中という内柴が昼頃、自宅から出てきたところを直撃した。
――「内柴正人旗少年少女柔道大会」が延期になった理由は?
「俺、延期にするっていわれただけだし、主催者じゃないから分からない。幾らかもらえるんだったら、もったいねぇじゃんってことになるけど、金儲けでやってないからね」
――女子学生に性行為、あるいはセクハラ的な行為をした事実はあるか?
「そういう噂があるのは知っているが、事実じゃない。事実だったら、こんなとこにいないでしょう。(俺も)困ってるんですよ」
――大学ではセクハラに関して調査委員会が開かれている。部員にコーチもできず自宅待機なのはなぜか。
「俺、調査してるの、知らないもん。大学にはちょくちょく行きますよ。まぁ、コーチは仕事じゃなくて趣味のうちだから。部を勝たせても給料が上がるわけでなし、趣味のサーフィンするのと一緒ですよ。実績上げたから俺の立場が上がるわけでなし。そもそも勉強の大学だからね」
――学生と飲みに行くことはあるか。
「ご飯を食べに行くことはありますよ。(お酒に関しては)学生が自らで判断するよ。子供じゃないんだから」
時折笑みを浮かべながら、淡々と質問に答える内柴。セクハラ問題については一切を否定したが、その目は泳ぎ、動揺は隠せなかった。さらに記者にこうも語った。
「俺は芸能人じゃないから、そっとしておいてほしい。そもそもこっちに帰ってきたのは、畑をやったりサーフィンをしたり、ゆっくりしたいから。有名になるためとか、お金がほしいから柔道を頑張ってきたわけじゃない。将来的にこうやってのんびりするために、頑張ってきたわけです」
現在、女子部員たちは内柴からの指導を受けられず、困惑が広がっている。しかし、当の内柴の口からは、一度も指導者としての熱い言葉は出なかった。
※週刊ポスト2011年11月18日号