「(たばこ税を)年100円ずつ引き上げ、(販売価格を)一箱700円にしたい」という小宮山洋子厚労相の不規則発言で、狙い撃ちされた格好のJTは、即座に反撃に打って出た。「政府保有株(JT株)を売却すれば、1.7兆円の税外収入が確保できる」(JTの田中泰行執行役員)と主張し、たばこ税増税よりも政府資産の売却を迫ったのだ。ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
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JTの反撃という予想外の場外バトルに慌てに慌てたのが財務省、中でも主計局ラインだった。
「主計局としては、増税に対して世論の理解があるうちに是が非でも所得増税、法人増税を決めることが悲願。そのためにこれまで水も漏らさぬ体制を敷いてきたと言っていい。そうした中、小宮山発言によってそうした増税計画が破綻しかかったのですから、主計局内は大慌てになったのです」(財務省幹部)
こうした状況を受けて、財務省サイドの動きは早かった。真砂靖主計局長が直接事態収捨に乗り出す。
「まずJTサイドを黙らせるために、真砂局長自ら木村宏JT社長に電話をかけ、何と2 時間近くもネチネチやったのです。いくら国が発行済み株式の50%を握っているとはいえ、JTはあくまで民間企業です。主計局長が直接電話をするなんてことはこれまで無かったことです」(財務省主計局幹部)
さらに小宮山大臣を戴く厚労省に対しては、主計局ラインが総出で強烈にプレッシャーをかけ、これ以上の不規則発言を何としてでも封じ込めようと動いたのである。
「財務省サイドのあまりの剣幕に、さすがの小宮山大臣も気圧されていた」(厚労省幹部)
こうした一連の動きから、復興増税を仕掛ける主計局ラインの本気度が窺えると言えよう。
ただでさえ財務省支配が強い野田内閣。その財務省を本気で怒らせては、もはや勝負あったというところだろう。
※SAPIO2011年11月16日号