日本には1年以上健康診断を受けていない人が3500万人いるという。費用がかさむのも原因のひとつだが、最近、血糖値、総コレステロールなど一つひとつの検査が500円、結果が出るまでわずか5~6分というサービスが登場した。政策工房社長の原英史氏が解説する。
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東京・中野区のJR中野駅前商店街にある「中野ブロードウェイ」はアニメやゲームソフト、フィギュア(人形)やコスプレ用衣装の店などがひしめく、秋葉原と並ぶ“オタクの聖地”として知られる。
その奥まった一角に、「医療分野の改革の芽」とも言うべき店舗がある。医療機関以外で血糖値などの数値が調べられる「ケアプロ」中野店である。検査料はたとえば、血糖値、総コレステロールなど一つひとつの検査毎に500円という「ワンコイン健診」だ。
2008年にこの中野の1号店をオープンして以来、イベント会場などを含めて3年間で約6万人が検査を受けた。
東大病院の看護師出身の若き起業家、川添高志・ケアプロ代表取締役社長(29)が設立のきっかけをこう語る。
「病院では糖尿病の病棟にいて、入院する患者さんたちに『健康診断を受けていない人』が非常に多かった。糖尿病は自覚症状がないので定期健診での早期発見が重要ですが、フリーターや主婦、自営業者などの方は、機会がなかったり忙しかったりして行けず、気がついたら病気になっている。これは健診のシステムに問題があるのではないかと考えるようになりました」
厚生労働省のデータを元にした推計によれば、日本には1年以上健診を受けていない人が3500万人いるという。サラリーマンには企業の定期健診があるが、自営業者やフリーターなど国保加入者で健診を受けているのは2割程度。こうした人たちを川添氏は「健診弱者」と位置づけ、「行政がカバーできないなら、民間で何かできないかなと考えた」(川添氏)というのである。
実際に血液検査を受けてみると、やり方は至って簡単。
同店ではカウンターの中に看護師がいて、「血糖値」「総コレステロール」など検査したい項目を伝える。
血液検査用には、印鑑ケースほどの使い捨ての検査器具が用意されていて、利き腕とは反対の手の指先にあてる。看護師の「ボタンを押してください」という声に従って、自分で器具の上部にある小さなボタンを押す。
すると器具から小さな針が出て指先から少量の血液が自動的に採取されるのである。痛みはほとんど感じなかった。
終わると採取した血液をその場で分析機械に入れる。結果が出るまで、わずか5~6分である。ちなみに、都心の病院で血液検査をしようものなら料金は保険外なら約6000円。結果がわかるまでの時間は約1週間かかり、その結果を聞きに行くために再び病院に行かねばならない。
※SAPIO2011年11月16日号