空前の円高になっている昨今だが、この状態を簡単にいえば、円の価値の上昇は「日本人がカネ持ちになる」ことを意味する。ところが、この国の財界とメディアは「輸出産業が破滅する」と悲鳴を上げている。そうじゃない。今は資産を有効活用できるタイミングにあるのだ。
たとえば、海外の通販サイトを利用した外貨建て購入が考えられるだろう。自らも海外通販のヘビーユーザーである経済ジャーナリストの前屋毅氏が語る。
「日本国内での『円高還元セール』では流通コストが上乗せされるので、国産品を買うのと大差ない場合が多い。個人輸入なら為替差益を独り占めできます」
当然、オイシイのは単価の高い商品だ。
「ゴルフやスキー、釣りなどの趣味の用具には海外製品が多く、私は自転車用品を英国の『Wiggle』というサイトで購入しています。人気のミシュランタイヤは3000円台で、日本で買う場合の半値以下。日本語で購入できるうえに、50ドル(約6200円)以上の購入は国際配送も無料。早ければ1週間程度で日本に配送されます」(同前)
通販上級者ともなると、「こうした商品をまとめ買いし、国内のオークションサイトで販売して月に10万円前後の副収入を得ている」(同前)という。
日用品でも「外貨購入生活」はできる。世界最大の通販サイト『Amazon.com』(米)や『eBay』(米)には食料品も販売されている。加工肉やミネラルウォーターなら同じ商品を日本で買うより2~5割程度安い。たとえば、飲料水「ボルヴィック」なら都内スーパーで1ケース(500ミリリットルボトル24本)が約2800円だが、『Amazon.com』では29.99ドル。円換算すると約2300円だ。
他には、コーヒーの「ネスカフェ」が最大で400円安い(日本は同等商品の「ネスカフェ・エクセラ」250グラムで比較)。トイレットペーパーや洗剤などの家庭用消費財は、もともと日本製より格安のため半額以下だ。
「生鮮食料品を別にすれば、日常生活に必要なものをすべて海外通販で買うことも可能です。原則として購入額が日本円換算で1万円以下なら関税はかからないので、むしろ日用品購入にこそ向いているといえるでしょう」(流通ジャーナリスト・金子哲雄氏)
なお、外国製品でも安くならないものもある。例えば高級外車だ。数百万円もする高額商品だけに差益が大きいはずだが……。輸入車ディーラーが明かす。
「表向きはブランドイメージを守るためという理由ですが、中古車市場への影響を避けたいというのが本音です。新車価格が下落すると下取り価格も下がるため、買い換えが進まなくなる。カーナビやシートなどの内装をグレードアップして割安感を出しています」
※週刊ポスト2011年11月18日号