1997年の橋本政権による緊縮財政以来、日本は長年デフレ状態が続き、政府の負債が増える一方だ。これに対し、政府は借金をこれ以上増やすことは「将来世代にツケを残す」と増税を強調する。しかし、デフレこそ、実は、景気回復、財政再建の絶好のチャンスと経済評論家、三橋貴明氏は指摘する。
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日本政府は今こそ建設国債を増発し、復興や次なる成長に向けた社会基盤整備(産業政策など不要だ)への「投資」を拡大しなければならない。デフレあるいはバブル崩壊は、資本主義国に「次なる成長」を目指す機会を与えてくれる、意義深いイベントなのだ。
具体的に何に投資をするべきか。ずばり「道路」「橋梁」「港湾」などのインフラストラクチャーである。日本のインフラの多くは高度成長期に建造されたため、現在は膨大な橋梁やトンネル、道路などがメンテナンスの時期を迎えている。
また、首都直下型地震が30年以内に発生する確率が87%(!)である以上、早急にインフラや建造物の耐震化を進めなければならない。インフラのメンテナンスや耐震化に必要な資金は、普通に日本政府が建設国債を発行し、日銀が長期国債を買い取れば済む。
無論、耐震化の投資は全国的に行なわれなければならない。西日本にしても、東海・東南海・南海地震の脅威を受け、津波で名古屋や大阪が水没する可能性が現実にあるのだ。
現在の日本国民が「安全」という商品にお金を惜しむとは思えない。そして、日本国民が自らの「安全」を求めて投資をすることで、日本は経済成長路線に回帰し、同時に将来の「安全」も確保できる。投資とは、歴としたGDPの需要項目の一部なのである。
※SAPIO2011年11月16日号