業界や企業によっては、「暴力団排除条例」施行以前より反社会的勢力(反社)の排除活動に取り組んでいるが、条例施行に合わせ、初めて取り組み始めたところも多い。今回、本誌は主要企業、業界団体への聞き取り調査を実施した。各担当者からは困惑の声が聞こえてきた。
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事業者ごとの温度差が顕著だったのが、ゴルフ場のケースだ。都内20か所のゴルフ場で組織する「警視庁管内ゴルフ場暴力排除対策協議会」会長でもある、都内ゴルフ場支配人はこう話す。
「私たちは、26年前に福岡のゴルフ場で発砲事件があったのを契機に発足した団体で、以後、暴力団排除に取り組んできました。条例施行に伴い、警視庁から講師を呼んで何が利益供与にあたるのか講義してもらいました。今年8月の総会で、より強化する旨を会員ゴルフ場と確認したところです」
この支配人のゴルフ場では、「4人のパーティのうち、3人が堅気で1人だけが暴力団関係者ならOKという同業者もいるが、ウチでは1人でもいたら、たとえプレー中でも中断して出て行ってもらいます」という。
逆に、条例に伴う対策をしていないゴルフ場もある。首都圏で複数のコースを展開しているゴルフリゾートグループ社員の証言。
「昔からクラブハウスの入り口には『暴力団関係者はお断わり』と書いてあるので、そもそもプレーできない前提になっています。しかし、実際はプレーしていますよ。親分も来ますし、もう完全に黙認ですね。彼らもわきまえたもので、いつも『堅気3人にその筋の人が1人』という形で来ます。
決して騒がないし、刺青が見えないように真夏でも長袖のアンダーウェアを着てお風呂にさえ入らず帰っていきます。そういえば、10月に入ってからあまり見かけませんね。自粛しているのか、様子を見ているのか……」
※SAPIO2011年11月16日号