市場規模20兆円、パチンコ業界の雄である<マルハン>の韓昌祐(ハン・チャンウ)会長。密航船で下関に着いてから64年、パチンコ界の巨人となったハン会長が、マスコミ初登場でインタビューを受けた。作家の山藤章一郎氏が報告する。
* * *
外の交換所に行って換金する〈3店方式〉、ゴト師たちの裏ワザ、在日韓国、在日朝鮮の利権、キタに渡る脱税マネー、警察との癒着。今回の議題ではなかったが、パチンコ業界は〈闇〉をかかえながら時代を生きつづけてきた。
ハン会長が語る。
「たしかにかつて負の部分はたくさんありました。しかし、それをひとつずつ改革してきました。これからもやるべきことは山積しています。
世界中どこにでも差別はあります。日本人が韓国人を差別するといいますが、韓国人の中国人差別はどうだ、と訊くんです。それほど韓国では中国人を差別する。世界でチャイナタウンがないのは韓国だけです。
差別に打ち勝つ、差別を撥ね返すたったひとつの道は、自分たち自身が教養と見識をもって社会貢献する。これしかないんです。私はね、16のときに日本に来て、産みの親は韓国、育ての親は日本と思っています。
ところがアジアから日本に帰ってくると、日本人の目は死んでるように見えます。衣食住が足りるとね、誰でも働く意欲をなくすんです。どうしたらいいか。私を育ててくれた国を再生させる方法、あなたも真剣に考えてください」
『ダイナムに続け、追い越せ』。マルハンの歴史はライバルとの死闘史だった。さらに、ローコスト史でもあった。店舗づくりの坪単価は100万円から80万、さらに60万、40万と絞りきってきた。
「資本主義は競争社会です。がめつく儲けてきれいに使う。儲けるためにはテクニック、技術が要る。それを使って、社員を幸福にし、恵まれないひとびとへの浄財にする。
『一笑一若 一怒一老 一日不作 一日不食』ひとつ笑いがあれば精神が若くなる。イライラ怒れば老いる。一日何もなさなければ、その日は食うべからず。社員に伝えている言葉です」
現在、ハン氏の店は16万7700台、272店。売上高2兆389億円。経常利益487億円。従業員数1万2000人。しかし、出玉の換金が合法か違法か曖昧なために、投資家保護ができないと判断されて、悲願の株式上場はいまだ果たせない。
※週刊ポスト2011年11月18日号