本誌で政治やメディア問題を厳しく追及する上杉隆氏の本業は、実は「ゴルフジャーナリスト」である。マスターズをはじめとする海外メジャー大会の取材には定評があり、自身も70台で回る腕前だ。そんな上杉氏は「政治家のゴルフに目くじらを立てるのも…」と嘆く。
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日本の政治家がゴルフを堂々としなくなったのは、森喜朗首相以降かもしれない。2001年、宇和島水産高校の練習船「えひめ丸」が米原子力潜水艦と衝突した際、事件の一報を聞いた当時の森首相は、そのままゴルフプレーを続行していたとしてバッシングを受けた。このように日本でゴルフが批判されやすいのは、いまだに「ゴルフ=カネと権力」という古いイメージが残っているからだろう。悲しいことに民主党政権では3代続けてゴルフをしない首相が続いている。
だが、世界のリーダーたちを見ればまったく違う様子が見えてくる。その多くはゴルフ好きばかりだ。とくにアメリカの歴代大統領は例外なくゴルフをしてきたし、メディアがそれをもって批判することもない。
ジョン・F・ケネディはゴルフ熱が昂じて、ホワイトハウスの中庭にアプローチ練習場を造ってしまったし、マリガン(打ち直し)を繰り返すクリントンはスコアも政治もごまかしばかりだとして、・ビリガン・と揶揄されていた(ドン・ヴァン・ナッタJr.『大統領のゴルフ』参照)。
現在のオバマ大統領も、駐留米軍兵士の慰問のために訪れた中東のクウェートで秘かにラウンドしていたほどのゴルフ好きである。
だが、それをメディアが非難するかといえば、まったくそんなことはない。オバマは暇さえあればシャドースイングをするのだが、ジャーナリストたちもゴルフクラブのCGを大統領の画像に加えるなどしてスイングチェックして遊んでいるくらいの余裕を持っている。「大統領、これはスライスしてるよ」と。
日本のメディアもいい加減、このユーモアと余裕を見習ってもらいたい。ゴルフを贅沢とみなし批判する心こそ、貧しいのではないか。英国首相と米国大統領のように、世界ではリーダーたちがゴルフを通じて友好を深めるのも当然になっているのだ。日本だけがそのサークルから取り残されている。その現状を打破するためにも、ゴルフ好きの首相が誕生することを待望してやまない。
※週刊ポスト2011年11月18日号