国内

児童7割犠牲大川小前の堤防 川の氾濫対策で津波用でなかった

 3.11東日本大震災から早くも8か月が経過した。宮城県石巻市出身のコラムニスト・木村和久さんが、縁のある人々の安否を自身の足で尋ねながら、震災直後から現在の状況までをレポート。全校児童108名のうち7割が行方不明や亡くなったりした石巻市立大川小学校を訪れた。

 * * *
 できるだけ冷静に、客観的になろうと、大川小学校の建物から離れてみます。裏山は険しそうですが、樹木が伐採された箇所もあり、子供が登れない傾斜ではありません。しかし、当時は雪も降っており、果たして全校児童をその裏山に避難させるほどの危機が迫っているのか…判断に苦しんだんでしょう。そもそも小学校自体が避難所になっていて近隣から続々と人が集まっていたそうですし、ここにいれば安全という考えが、最後まであったのではないでしょうか。

 大川小学校は北上川河口から4kmです。まさかここまで津波が来るとは思ってもみなかった、それが真実でしょう。海から1kmの距離の私の実家でさえ、まさか津波が押し寄せて来るとはこれっぽっちも考えていませんでした。なにしろ実家の叔父は一度避難したのに、もう津波は来ないだろうと家に戻ったところを津波に閉じ込められましたから。

 大川小学校の前にある巨大な堤防は一見安心そうに見えますが、それは川の氾濫対策でしかなく津波用には造っていないのです。現に大川小学校より先の河口方面は堤防がすべて決壊して、海なんだか川なんだか陸地なんだか、よくわからない状態が延々続きます。河口にある長面の海水浴場は、手前が地盤沈下して島のようになっています。河口にもっとも近い長面地区の被災状況は、想像をはるかに超えていました。地盤沈下で家の基礎部分が水没し、小魚の遊び場になっているのです。震災後、北上川の河口が何倍にも広がり、陸地が消えて無くなっていました。

 大川小学校は河口から4kmといっても、標高は海面とほぼ一緒、せいぜい標高1~2mでしょう。10mの津波が来たらひとたまりもないのです。北上川の下流域は、高低差はほとんどありません。なにせ津波は50km上流の登米市まで到達したといいます。

 次に、ひと山越えて雄勝地区に行ってみます。ここは、以前は雄勝町という独立した町だったのですが、市町村合併で石巻市になりました。近隣の女川町や南三陸町のように大きく報道されていませんが、20m以上の津波が直撃し、被害が最も甚大な地区のひとつです。津波は3階建ての雄勝病院の3階まで来ていました。公民館の屋上には、観光バスがのっかったままです。街はほぼ全滅で、現在、港近辺に住んでいる人はいません。ただ何人かの地元のかたが、岸壁で釣りをしていました。そののどかともいえる光景に、少しだけ気持ちが休まったのは確かです。

 しかし、これからまた厳しい冬を迎えます。被災地にとって、試練はまだまだ続きます。

※女性セブン2011年11月24日号

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