日本では、出生に占める35才以上の母親の割合が年々増加している。厚生労働省の「平成22年版働く女性の実情」によると、女性の雇用者数は2329万人となり、前年に比べ18万人増加(前年比0.8%増)で過去最多となった。雇用者総数に占める女性の割合は過去最高の42.6%で3年連続の上昇。年齢別に見ると、女性の就業率は25~34才の年齢層では20年間で14%上昇している。
産婦人科専門医の宋美玄さんと、医療ジャーナリストの熊田梨恵さん。医療の最前線にいるふたりが、高齢出産“させる”社会について語り合った。
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熊田:高齢出産についてのリスクや考え方はわかったと思います。でもどうしても難しいのは、仕事との両立なんですよ…。私はジャーナリストですが、やはり一度妊娠出産のために仕事を休んだら、もう仕事が来なくなるかもしれない、ドロップアウトだと考えてしまうんです。仕事を取るか、子供を取るか、という選択を迫られる感じなんですよね。結局それもあって、20代のころは結婚や妊娠を考えないようにしていたところもあります。
宋:女性はそうですよね。いまはみなさん学校を出たら就職するから、20代のころは頑張って働く。現代日本の女性は、生物学的な出産適齢期と、キャリア形成期がぶつかってしまってるわけですわ。だから高齢出産にならざるを得ない。この前ツイッターで「女性が若いうちに産まないのは(生まれる子供への)虐待だ」なんていう男性がいて、めっちゃ腹立ちましたけど、じゃあなぜ、女性がそうできないのか。若いうちに産みにくいんですよ、いまの日本は。外来で妊娠を告げたとき、嬉しそうにされる一方で、生活を考えて困惑される女性も少なくないですわ。
熊田:20代の早いうちに産む、イコール、仕事のキャリアを望まないことを選択した、みたいになるんですよね。友達とも話しますけど、どうして子供を産むことが「あきらめる」になるのかなって……。高齢出産の生物学的なリスクをちゃんと知っておくことも大事だけど、本来は20代で産みたいと思ったときに悩むことなく産めて、また仕事に復帰できる社会だったら、女性はもっと楽に生きられるのに、と思います。
宋:そうですね。それに、無事に出産・育児と進んでいけばいいですが、例えばパートナーの男性に仕事や体調など何かがあったり、子供に病気や障がいがあったりした場合、やっぱり女性が頑張って育てていかざるを得ない社会なのが現実だと思います。残念だしどうかと思うんだけど、実際問題、そういうリスクも考えなければいけない。人生かけて産むか、仕事を続けるかを迫られてるわけですよね。
※女性セブン2011年11月24日号