年間約3万人――1日に80人以上が自ら命を絶つ「自殺大国」日本。そうしたなか、“孤独”の闇で悩む多くの人々の話に耳を傾け続けてきたのが、『いのちの電話』だ。今年、設立40周年を迎えた。
相談員のもとには、自殺をほのめかす、切羽詰まった電話がかかってくることもある。そんな場合でも、相談員は慌てずに説得を試みる。
「ロープは切り刻んでみてください。誰かと一緒に暮らしていますか? ひとりで住んでいるの?」
反応が薄くても、「このままあなたに死なれたら、私もつらい。なんでもいいから、もう少し話しませんか」と必死で話を引き延ばす。
日本いのちの電話連盟理事の斎藤友紀雄さんはこう話す。
「近年はやはり、中高年からの電話相談が圧倒的に多くなっています。うつ病をはじめ、心の病を抱えた人からの電話が大半を占めるので、自殺予備軍と捉えて相談に応じています。必要に応じて信頼できる精神医療につなげますが、実はほとんどの人がどこかのクリニックで治療を受けています。問題は、治療は受けてもその後のケアが不充分なことです」
逆に若者からの電話相談は減っていて、現在は10代からの相談は全体の3%。少子化の影響もあるが、斎藤さんは「電話でさえもコミュニケーションを取れない若者が増えた」と実感しているという。
「1980年代半ばから引きこもりの若者が増え、リアルタイムで交互に会話をする電話ではやりとりができない情緒的な問題を抱えた若者が多くなっています。そこで私たちもインターネットを通しての相談を2007年から始めました。そのうちの7割が若者たちからの相談です」(斎藤さん)
現在、電話とネットをあわせた年間の相談は約75万件。1971年からのトータル相談件数は、1550万件にものぼっている。
※女性セブン2011年11月24日号