大前研一氏は先日、原発事故の再発を防止するためのセカンド・オピニオンを東京電力、日立GEニュークリア・エナジー、東芝などの原子力専門家の協力を得てまとめた『「福島第一原発事故から何を学ぶか」中間報告』を細野豪志原発事故収束・再発防止担当相に提出した。以下は、大前氏の原発事故に対する解説である。
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同報告書は、メルトダウンして放射性物質を撒き散らした福島第一原発と、同様の大地震・大津波に見舞われても事故にならなかった福島第二原発、女川原発、東海第二原発を比較した結果、その間には電源と冷却源を確保して緊急停止した炉心を冷やすことができたか否かの違いしかなく、したがって「長時間にわたる全交流電源喪失は考慮する必要はない」とした原子力安全委員会の設計思想が直接の事故原因である、と結論づけた。
つまり、福島第一原発事故は大地震・大津波による「天災」ではなく「人災」だったのである。
言い換えれば、どれほど大きな地震や津波に見舞われても(あるいは旅客機が墜落してきても、テロリストに襲われても)電源と冷却源を確保する設計思想であれば過酷事故を防げたはずだ。
仮に完全に水没してしまっても、「何が起きても電源と冷却源を確保できる」多重的・多様的な安全対策を施した原発でなければ、再稼働してはならないのだ(同報告書の詳細はhttp://pr.bbt757.com/2011/1028.htmlをご覧いただきたい)。
※週刊ポスト2011年11月25日号