プロ野球・日本シリーズでソフトバンクと戦う選手たちの活躍とファンの盛り上がりに、複雑な思いの中日関係者も多いのではないか。
シーズン途中に、落合博満監督(57)の今季限りでの退任を発表。それが監督と選手の“負けじ魂”に火を付けて逆転優勝。クライマックスシリーズでもヤクルトを撃破し2年連続で日本シリーズに駒を進めた。
いまさらクビにしたことを後悔しても後の祭りだが、とくに落合監督の唯一の理解者といわれる中日球団の白井文吾オーナー(83)の胸中はいかばかりか。シリーズ出場を決めた翌日、白井オーナーを直撃した。
――日本シリーズ進出を決めた落合野球はどうですか?
「強いね。こちらの期待通りの野球をやってくれるよ」
――続投がダメだった理由は人気のなさか? 中日新聞の部数低迷か?
「ダメだなんて、ひと言もいってない。そういう契約なんだ。みんな、強いと継続、弱いと早く切れというけど、それは違う。今回、契約を更改するかどうか迷ったのは事実。でも、8年もやってるからね。監督の仕事は心身をすり減らす。3年やるのも大変なんだよ」
――退任は落合監督の体を気遣ってのことなのか?
「体もそうだけど、落合はシーズンが始まる前に“連覇してみせます”といい切った。中日では誰もできなかったことをやるというのだから、私には“自分はこれで最後で、全精力を注ぎ込む”という宣言に思えた」
――落合監督自身は連覇を続けたかったとも聞くが。
「そういうことで続けて、うまくいった人はいないよ」
――後悔していない?
「(慌てて)いやいや。まったくしていない。連覇という素晴らしい中日の歴史を作ってくれたのだから、見事な卒業記念だと思う。落合は素晴らしい監督ですよ。素晴らしいから、いろんなことを考えて契約通りにしたほうがいいと決断した。後悔なんかしていないよ」
※週刊ポスト2011年11月25日号