英子会社出身のウッドワード社長の解任から発覚したオリンパスの巨額粉飾問題。オリンパスは有価証券の巨額の含み損をファンドやM&Aを使って“飛ばし”ていたという。
この事件は日本内外で大きく報じられたが、両者を比べると、日本の報道は、最初は及び腰、後から居丈高でみっともないが、海外の報道にも首を傾げたくなる点が多い。
最初にウッドフォード氏が不正問題をリークした英フィナンシャル・タイムズが連日、大特集を組んで追及キャンペーンを張っていることはわからないでもないが、米ニューヨーク・タイムズや3大ネットワークなども、やれFBIが捜査に乗り出した、やれSECが動いた、といった大騒ぎである。挙げ句には「ヤクザに13億円が流れている」といった真偽も情報源も怪しい話まで堂々と報じられており、取材力のない日本の大マスコミが、それを「海外で○○と報じられた」と引用するものだから、ますます「オリンパス巨悪経営」が印象付けられている。
外国メディアが過熱する理由について、証券会社OBコンサルタントがこう解説する。
「オリンパスの上場廃止は確実視されており、それでは済まずに会社更生法適用、すなわち倒産まで行くという見方も多い。そうなれば海外のファンドや企業が買収に乗り出し、また1つ、世界に誇る日の丸企業がハイエナの餌食にされることになる。その弱った獲物の匂いを敏感に感じているからこそ、海外メディアは興奮しているのだろう」
それもそのはずで、仮にハイエナの餌食になるとすれば、オリンパスは“相当旨そうな肉”である。
よく知られるのは医療用の内視鏡で、世界シェアの7割以上を持ち、事実上の世界独占企業である。オリンパスがなければ高度医療の検査も手術も成り立たないといっても過言ではないのである。
そればかりではない。投資顧問会社・マーケットバンク代表でM&Aに詳しい岡山憲史氏の分析を聞く。
「売り上げの約42%を占める内視鏡など医療事業はもちろんですが、他の基幹事業も強みを持っています。売り上げの約25%を占める情報通信ではスマートフォンが好調、約16%の映像事業ではデジタル一眼レフ『ペン』シリーズ、約12%のライフ・産業事業では生物顕微鏡が伸びている。
財務体質も優秀です。売上高が約8500億円に対して、現預金が2000億円あまり。キャッシュを潤沢に持っていることが特徴で、年間700億円もの研究開発投資ができるのは、このおかげでしょう。一方で、負債は長期借入金と社債を合わせても5000億円あまりで、売上高と比較すると債務負担は小さい。
隠れ損失がどれくらいかによりますが、これだけキャッシュリッチで基幹事業が堅実な会社がPBR(株価純資産倍率)1倍を切る現状は、非常に“お買い得”といえます」
※週刊ポスト2011年11月25日号