各国の大使館や高級マンションが立ち並ぶ東京・港区元麻布の一角に、その豪邸はある。高い木々に囲まれた約800坪の敷地は高さ2メートルを超える塀をめぐらせ、通りからは中の様子は窺えない。どこかの大国の大使館か、それとも財をなした名家のお屋敷か。
門扉には「笠間」の表札が掲げられていた。検察トップ、笠間治雄・検事総長の“自宅”である。
ただし、邸宅の登記簿謄本に笠間氏の名はない。土地は「法務省」、建物(総床面積は613平方メートル)は「大蔵省」の所有。ここは検事総長専用の公務員宿舎なのだ。
本誌記者が訪れたのは平日の午後1時過ぎだったが、訪問者はほとんどいない。3時間ほどの間に司法クラブ詰めと思われる1人の新聞記者が呼び鈴を押して門の中に入っていっただけだった。
「建物は広い2階建てで、玄関を入ると記者懇談に使われる応接室と、広い会議室がある。それ以外は私邸部分で、庭は手入れの行き届いた日本庭園になっています」(全国紙司法記者)
家賃は「月額13万2060円」である。港区内の不動産業者に相場を聞くと、「周囲に比較できる賃貸物件なんてありません」と前置きして、「民間なら月額数百万円の家賃になると思いますが、一戸建てではなくマンションを建てて貸すなり分譲するなりしたほうがかるでしょう」と、算盤をはじいた。
ちなみに笠間氏は前職の東京高検検事長時代も官舎に居住していた。場所は目黒区八雲の高級住宅街で、広さは約200坪。こちらもなかなかの豪邸である。
9年前、時の小泉首相が首相公邸の建て替え工事のために内閣法制局長官公邸に仮住まいした時、その豪華さに「総理大臣より、官僚の公邸の方が上なのか」と絶句した。法制局長官公邸には、大理石づくりのジェットバスとトイレ、「会議室」という名の巨大冷蔵庫付き宴会場、地下には防音設備完備のカラオケルームまであったからだ。
※週刊ポスト2011年11月25日号