鉢呂吉雄・前経産相が「放射能発言」で辞任に追い込まれたきっかけとなった「オフレコ懇談」。民主党政権は、そもそも番記者がつくような立場を経験したことのない野党暮らしの政治家、まだまだ陣笠の議員ばかりだったため、このオフ懇の使い方がよくわかっていない。オフレコとはいっても発言はすべて「オフ懇メモ」として各紙の幹部に回覧され、時にはライバル政治家にご注進されることもある。
以下、本誌が入手したオフ懇メモに記載された仰天発言を紹介しよう。なお、これはあくまでメモの内容なので、本当にそう発言したかは未確認である。なにしろ鉢呂氏の「放射能つけちゃうぞ」は捏造だった疑いが強いとされるから、新聞記者が作るメモの信頼性も昔とは大きく違うのだろう。念のためお断わりしておく。
オフレコ問題といえば、鳩山政権で官房長官、野田政権では国対委員長という重責を担う平野博文氏が一家言持っているようだ。件の鉢呂問題が起きた直後の9月中旬、集まった番記者たちをまずは一喝した。
〈今日は「完オフ」だ。「オフ」だとあんた方は記事にしてしまうからな。もし完オフを記事にしようものなら、俺は二度としゃべらんぞ!〉(オフ懇メモより。以下同)
そうやって記者クラブを恫喝し、支配する場としてオフ懇は重要なのだ。大マスコミはその支配を簡単に受け入れる。平野氏の怒りはまだ収まらず、さらにまくし立てた。
〈オフレコで大臣を追い込むというのは、俺は絶対に許せない。それが永田町のルールだろうが。俺が官房長官の時は、オフレコの内容が漏れた時は徹底調査したもんだがな〉
平野氏が「オフ破り」に神経をとがらせるのは、自身はオフ懇で党内外の陰口を縦横無尽に繰り出すのが十八番だから。例えば役人の手先になって増税を叫び続ける財務大臣には、
〈財務官僚は安住を馬鹿にしきっているからな〉
と切って捨て、亀井静香・国民新党代表が、大阪ダブル選で民主党が推す候補を応援しないと発言したことを聞くと、
〈そんなこといっちゃダメだといっておいたのに。面白いじゃない。郵政(法案)を通したくないんかな?〉
と、亀井氏が執念を燃やす法案を人質にとって見下す。
メモの「無内容」が際立つのが前原誠司・政調会長だ。政策責任者なのに、何を聞いても、〈知りません〉〈聞いてません〉〈わからない〉〈ノーコメント〉
のオンパレード。実際、たまに同氏が話した内容が間違っていることも多く、番記者からは「実は党内で信用されていないのでは?」と疑われている。
会長にかわって記者を威嚇するのが仙谷由人・政調会長代行。自らの失言でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)論議が紛糾したことから、発言撤回するかと訊かれて(10月末)、
〈撤回? するわけないだろ! もう一回いってみろ、オラ! お前はそこにいたのか!〉
と、チンピラそのものだ。
どうもこの政権は年寄りほど冷酷になるようだ。「ミスター消費増税」の異名をとる藤井裕久・党税調会長は10月末、テレビ出演の後に怪気炎をあげた。
〈50年間、優秀な先輩方ができなかったことを、ついにやろうとしている。僕は信心深くないけれども、毎日、神棚に手を合わせている。池田勇人さんは信心など全くなかったけど、やはり神頼みしていた〉
消費税を上げるのが、そんなに興奮する偉業なのか。この感覚は元大蔵官僚ならではだろう。「優秀な先輩方」とは、もちろん過去の官僚を指している。池田勇人・元首相も大蔵出身だ。彼は「貧乏人は麦を食え」と言い放ち、所得税率を最高75%まで引き上げた「大蔵省の英雄」である。
藤井氏は、今度は自分が消費税を過去最高税率に引き上げて、「池田先輩」に肩を並べたいと考えているのか。「どうか私に消費増税をやらせてください」と毎日、神棚に拝む藤井翁の姿を想像するとゾッとする。
※週刊ポスト2011年11月25日号