官庁の都心の官舎は、皇居や霞が関に近い千代田区番町や港区青山などにあるマンションタイプが多いが、厚労省は渋谷区内の住宅地に2棟の戸建て官舎、環境省は新宿御苑に隣接する住宅地に5棟の瀟洒な戸建て官舎を持っている。所長以下、造園職や巡視などが入居しているというが、環境省はその必要性をこう主張してきた。
「新宿御苑は広域の避難場所に指定されており、大正12年の関東大震災、昭和2年の大火の際は避難民に御苑を開放した。緊急時には門を開けなければならないから、御苑に職員住宅が必要だ」(国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議議事録より)
緊急時に門を開けることなら宿直で十分であり、所長も造園職も巡視も、他の官舎から通勤すれば済む。第一、公園の警備なら民間に任せた方がよほど効率的でコストも安いはずである。
しかも、そのうち1軒の表札の主の勤務先を調べると、新宿御苑ではなく、霞が関の本省に通勤していた。「職住接近の必要性」など建前にすぎない。
※週刊ポスト2011年11月25日号