橋下徹・前大阪府知事(42)がキレにキレまくっている。
<バカ新潮の馬鹿さ加減もここに極まれり>
<バカ文春も、バカ新潮も俺の不祥事は何も報じていないじゃないか!>
<バカ文春、バカ新潮、反論してこい>
ツイッター上でのこうした“怒りのつぶやき”は多いときで1日50回以上、本誌が確認する限り“バカ”“馬鹿”という表現は計46回を数えた(11月14日現在)。
発端は、『週刊新潮』と『週刊文春』の2誌が10月27日発売号で掲載した、センセーショナルな記事だった。
<「同和」「暴力団」の渦に呑まれた独裁者「橋下知事」出生の秘密>(『週刊新潮』)
<暴力団組員だった父はガス管をくわえて自殺 橋下徹42歳 書かれなかった「血脈」>(『週刊文春』)
「出生」「血脈」というタイトルの通り、記事はいずれも橋下氏の親や親族に言及するものだ。その記事の内容はこういうものだ――
大阪府八尾市で生まれ育った橋下氏の実父は1960年代の後半に当時の妻と離婚後、別の女性と東京に出る。1969年にこの2人の間に誕生したのが橋下氏だった。やがて妹が生まれたが、父親は家族を残し、ひとり大阪へ。そして橋下氏が小学2年生のころ、ガス管をくわえて自殺する。博打でヤクザに借りた金が返せなかったためだったという。
残された母と妹は橋下氏が小学5年生のとき、新大阪駅にほど近い地区の府営住宅にはいる。この地域も同和地区がある一帯だった。
氏が通った中学では、“地元集中”といって、学力の高い生徒も低い生徒も、地元の同じ高校に進学させる措置をとっていた。しかし、橋下氏はこれに反発し、大阪府内でも屈指の進学校、北野高校に進学する。
記事は、橋下氏の伯父の息子、つまり従兄が起こした金属バット殺人事件についても詳述。知事の経歴を<類を見ないほどの異様性を帯びている>(『週刊新潮』)などと断じる。
橋下氏は貧しく苦労の多かった幼少時代をバネにしながら、早稲田大学政治経済学部を卒業し、弁護士になったが、若手弁護士時代は<売春地帯の守護神>(同)を務め、<カネへの執着を隠さなくなっていた>(『週刊文春』)という。
複雑な生い立ちを暴かれた橋下氏。実父が暴力団員だったことや、従兄が殺人事件を犯したことは事実と認めながら、ツイッターへの書き込みでこう反論する。
<僕の生い立ちは結構。しかし、僕のはるか昔に死んだ実父の出自、行状、死亡経緯は僕の何のチェックに役立つんだ? 僕は実父に育てられたわけではない。僕の苛烈な言動は、その実父の何に源泉があると言うんだ?>
生い立ちについて報じることは構わないという彼がなぜ怒っているかは、次の書き込みに集約されるだろう。
<今回の報道で俺のことをどう言おうと構わんが、お前らの論法でいけば、俺の子供にまでその血脈は流れるという論法だ。これは許さん>
橋下氏には中学生から4才まで3男4女、7人の子供がいる。報道の対象は一見、前知事であり市長選の候補者としていわば「公人」である橋下氏に向けられている。しかし、報道が「血脈」「出自」の問題を取り上げている以上、子供たちをも俎上に載せていることになる――という主張だ。
同和地区への差別解消を目指して活動する部落解放同盟の大阪府連合会は、今回の報道が差別を助長するとして、『週刊新潮』『週刊文春』に抗議文を送った。
「両週刊誌の記事は、橋下氏の父親が暴力団員であったことと、出自であり暮らしていた地区の問題を同列に扱っています。暴力団とその地区がイコールで結びつけられているのです。同和地区に対しての偏見のなかに、“暴力的である”“ガラが悪い”といったイメージがある。両週刊誌の記事はこうした差別、偏見を助長してしまいます」(部落解放同盟大阪府連合会・赤井隆史書記長)
一方、2誌側は、本誌の取材に対して次のような回答を寄せ、橋下氏の出自について記述する正当性を強調した。
<橋下氏は府知事選に出馬した時から、「自分は同和地区で育った」と街頭演説や議会でも発言しています。公人であり、政治家の発言は当然ながら、それなりの意味を持ちます。それを差別的に報じるならば問題ですが、ただ出自について書いたからといって、公人チェックの限界を超えているという批判は当たらないと思います>(『週刊新潮』)
<記事に書いてあることがすべてです>(『週刊文春』)
差別なのか、正当な報道なのか――両者の言い分は平行線をたどっている。
※女性セブン2011年12月1日号