「同じ墓に入ろう」がプロポーズのキメ台詞だったのは、いつの時代だったろう。いまや女性の間では、ご先祖様どころか、夫とも一緒の墓に入りたくないというのが“常識”だ。トレンドは「自分だけの墓を買う」である。
自分だけの墓を買うことが定着すると、墓のトレンドも変わる。先祖代々の墓から解放されることで、墓に個性が生まれている。
代表的なものは「洋型墓石の増加」だろう。洋型墓石とは、縦に長い日本的な墓ではなく横に長い墓のことだ。様々な装飾やデザインをつけやすく、業界では「オルガン型」などと呼ばれている。
全国の石材店約300社で構成される「一般社団法人 全国優良石材店の会」の調査では、新規建立の墓のうち、1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)で59.1%、関東全域で57.2%が洋型墓石という。墓石に「愛」や「平和」といったメッセージを刻み込むのも最近の傾向だ。
もう一つのトレンドは、「耐震」である。被災地では墓石の倒壊が相次いだことから、ステンレス製の耐震ボルトで墓石の上から下までをつなぐ「KI式耐震工法」(小泉石材店)や、特殊ゲルが震動を吸収する「安震はかもり」(安震)といった“ブランド”に問い合わせが殺到している。
原発事故も墓選びに影響を与えている。石材店メーカーの社長がいう。
「地域の放射線量を測定する市民団体から、私たちが運営する霊園で高い放射線が検出されたと連絡がありました。調べてみると、原因は放射線を持つ御影石(花崗岩)でした。お客さんからも身体に影響はないのかと問い合わせがありましたよ。そのせいとまではいいませんが、御影石を使った石材の売れ行きは芳しくないですね」
※週刊ポスト2011年11月25日号