大人力コラムニスト・石原壮一郎氏の「ニュースから学ぶ大人力」、今回のテーマは「TPP」。賛成反対の意見が乱れ飛ぶ中で、どのようなポジションを取るのが「大人としてイカした態度」なのか考えます。
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最初から結論を決めている気配がビンビン伝わってきますが、TPP(環太平洋連携協定)の問題で、国会議員のみなさんがチーチーパッパ、チーパッパ(TPP)と騒いでらっしゃいます。
きっとそれぞれに、いろんな方面の顔を立てたり反対した実績を残しておく必要があったりするのでしょう。飽きもせずその手の茶番を真剣に繰り返している政治家のみなさんには、心から感心せずにいられません。本当におつかれさまです。
きっと、TPPは日本の将来を左右する大事な問題なのでしょう(たぶん)。だからといって、よく理解できていないまま、しかもダイレクトに影響が及びそうな業界にいるわけでもないのに、半端な講釈を垂れるのは慎みたいもの。
「政治のことを熱く語れば賢く見えると思っている浅はかな人」というレッテルを貼られたら心外だし、その場にほかにも似たような人がいると、意見が対立して無駄に険悪な雰囲気になりかねません。
大人として、この微妙な問題をどう語るべきか。話題が出たときに「TPPって、あれでしょ、TPPにあった服装をしなさいとか言う、そのTPPだよね」とボケるのは、ウケるかどうかはさておき、それはそれで潔い姿勢です。
もうちょっと知性を示したいなら、「どうしてこの問題が、いまの最大のニュースになっているのか、さっぱりわからないんだよね。もっとほかに大事なことはないのかなあ」と不思議そうに言っておきましょう。ちなみにこの作戦は、ほかのニュースが盛り上がっているときにも使えます。
「野田総理って何言われてものらりくらりで、ホント、どじょうみたいにつかみどころがないよね」「オバマ大統領に、明らかに相手にされてなかったのがかわいそうだったよね」などと、野田総理にスポットを当てて語るのもひとつの手。賛成か反対かを曖昧にしたまま、何となく“自分なりの意見”を述べた気になれます。
あるいは「京都大学の中野なんとかっていう人、態度は悪いけど、言ってることはまともだよね」などとテレビで見かけた論者についてコメントすれば、深い興味や見識がありそうに見えるでしょう。
また、誰かが「あんなの絶対に反対だよ!」とか「あれは参加したほうがいいって!」と熱く語っていたら、「すごいなあ。ちゃんと考えてるんだね」と称賛して満足感を与えておくのが大人のやさしさであり、長々と凡庸な講釈を聞かされるのを防ぐ方法です。
「お前はどう思うんだよ?」と聞かれたら、「よくわからないけど、10年後に今の騒動を振り返ったら、いったいどう見えるんだろうね……?」と逆に聞き返しましょう。そんなことわかりっこないし、ちょっと冷静さを取り戻せたりもするので、話はそこで打ち切りになるはずです。
相手の微妙な表情を横目で見つつ、痛いところを突いてやった満足感をこっそり覚えるのもオツなもの。ちなみにこの作戦も、ほかのニュースのときも使えます。