イタリアのアパレル大手ベネトンの広告キャンペーン「アンヘイト(憎しみに反対する)」。オバマ米大統領と中国の胡錦濤国家主席、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領、北朝鮮の金正日総書記と韓国の李明博大統領ほかが「ぶちゅッ!」とキスして話題になっている。では、我が国の野田首相は……? 作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察する。
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こんな写真、ありですか!? と、思わず目を疑った人も多いはず。
オバマ米大統領と中国の胡錦濤国家主席が、「ぶちゅッ!」と肉感的なキスをしているポスター。今、ネットやマスメディアで世界中に発信され、大注目されています。
なんだか、オバマ大統領の表情はうっとりと恍惚に酔っているみたい。余計な説明もコピーもなく、ただ二人の人物の顔が大写しになった画像が、こうも強烈なインパクトを持つとは。
ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領のキス写真もありました。メルケル首相は、イタリアの好色男、元首相・ベルルスコーニ氏ともキス! と、ここまではニヤリとしながら眺めていたのですが。
北朝鮮の金正日総書記と韓国の李明博大統領のキスには、「まさかここまでやるか」と背筋がヒヤリ。イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナのアッバス議長のキスとなると、広告表現に対するベネトンの「骨太の思想と批評性」を感じさぜるをえません。
イタリアのアパレル大手ベネトンの広告キャンペーン「アンヘイト(憎しみに反対する)」。
単なるなる思いつきや、ちょっと閃いたアイディア程度では、採用できない表現行為。
いわば、「哲学」に裏打ちされているからこそ、世界へむけてこの広告シリーズを発表できたのでしょう。
中には物議を醸して削除されてしまった例も。ローマ法王・ベネディクト16世とイスラム教スンニ派の最高権威・タイーブ総長のキス画像に、バチカンは強烈な抗議をし法的措置を取る考えを明らかにしたため、広告は削除されたとか。
現代社会には、刺激的な映像が溢れ返っています。精巧なCGアニメに、凝った立体画像、飛び出す動画。しかし、そうした複雑な技術を使わずとも、「刺激的な画像はいかようにも創れる」ということを、今回のベネトン広告は浮かび上がらせたのではないでしょうか。
もちろん、デジタル画像の合成技術が進歩したことが背景にあります。しかし、「アンヘイト」シリーズは、あくまで二次元の静止画像。いわば、古典的なポスター形式。そうであっても、多くの投げかけを発信し、世界中の人々に平等と平和への思考を誘うことができるという、新鮮な可能性を感じさせてくれました。
さて、日本の野田首相は……当然といえば当然ですが、誰ともキスしていません。広告に登場しなかったのはどこかの国と深刻な対立関係に無いという証し。その「平和」を喜べばよいのか、それとも、国としての存在感の薄さに、慌てふためき危機感を抱くべきなのか。
少なくとも、私の頭の中で今、はっきりと浮かんだ「構図」は……。大阪市長選で大激突中の橋下徹氏と平松邦夫氏、あるいは、巨人のナベツネ・渡辺恒雄球団会長と清武英利球団代表兼GMのディープキス画像でした。