不動産バブルに沸いた中国。一部の富裕層が富を独占し、低所得者層は持ち家の夢を絶たれたのが現実だ。さらに、そんな彼らのために作られた住宅「保障房」もまた、マネーゲームに利用されようとしている。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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都市部での不動産価格(土地は使用権の売買価格)が下落傾向に転じた中国だが、その価格は庶民にはまだまだ手の届かないレベルに止まっている。持ち家の夢を断たれた国民の不満は高く、国内のメディアが街角で『中国の問題』を質せば、必ずベスト5までに不動産高騰問題が挙げられるというのが、ここ五、六年続く傾向だ。
こうしたなか党・政府が力を入れているのが「保障房」と呼ぶ低所得者向けの住宅である。党と政府は地方政府に対して、一定規模の低所得者向け住宅の建設を義務付けて推進を呼び掛けてきた。
しかし、そこは抜け目のない中国のこと、きれい事のまま終わらないのが常である。11月の中旬、中国の古都・西安市で収入証明書を偽造して大量購入していた不動産会社が当局によって摘発され、全国的な話題となっている。
そもそも身分証さえ偽造できる国で、一生の買い物をするのに偽造が横行しないはずはない。しかも本来「集団での購入」は禁止されている保障房で堂々と業者が大量に買い付けているのだからどうしようもない。
政府が用意した低所得者向け住宅はあっという間に転売(これも一定期間禁じられている)され、消える運命であることは火を見るよりも明らかだ。
一方、11月14日付の『新京報』は、この保障房の建設が、計画だけで実は進んでいないことに警告を発している。その手口は保障房を手掛ける地方が、マンション建設の土台を掘っただけで、そのまま工事をストップしてしまうというものだ。そのため〈監督者は建物ができ上がるまでしっかり見張るべきだ〉と呼びかけている。
いずれにしても不動産の売買は地方政府の収入と一体化しているので、地方政府にうまみのない開発などあの手この手でサボタージュしようという魂胆が見え見えだ。