国内

B級グルメ祭典「B-1グランプリ」 焼きそばが圧倒的に強い理由

「B-1グランプリ」 焼きそばが圧倒的に強い理由

話題のニュースや著名人などに縁のある料理を紹介する「日本全国縁食の旅」。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏がお届けする。今回は、11月12・13日に兵庫県姫路市で行われたB級グルメの祭典「B-1グランプリ」を素材に、「焼きそばブーム」について考える。

* * *
すっかり秋の風物詩となった、全国各地のB級グルメの祭典、B-1グランプリ。今年の第6回大会の優勝は岡山県真庭市の「ひるぜん焼きそば」となった。第1回からのグランプリを数えると、富士宮やきそば、富士宮やきそば、厚木シロコロ・ホルモン、横手やきそば、甲府鶏もつ煮、ひるぜん焼きそばの順となっている。

B-1では圧倒的に焼きそばが強い。全6大会中4大会で栄冠を勝ち取っていて、今回の上位10団体を見ても、ひるぜん焼きそばのほか、4位になみえ焼きそば、6位にも石巻焼きそばが入賞している。

なぜ焼きそばはこんなに強いのか。確かに今回も出店63団体中、12団体がやきそばを供していて、多勢であることは間違いない。だが優勝率66.7%とはあまりに強すぎる。その理由は、焼きそばを出す店舗が地域で生き残ってきた系譜と関わりが深い。

飲食店経営では、どんなに小規模でもキャッシュフローを回すのが絶対条件だ。現在の飲食店経営でも、FLコスト(※Food/Laborの略)という、食材原価+人件費の比率は重視されるが、焼きそばのように原価が安ければ、急激に経営が悪化するということは考えにくくなる。

もうひとつ欠かしてはいけない視点がオペレーションだ。客が焼く業態だけでなく、店が焼く業態でも、「焼きそば」は他に比べて圧倒的にオペレーションを簡素化できる。麺、ソースなどほぼすべての素材が外注可能で、肉やキャベツを切るだけでも立ち上げはできる。競合店も増えるが、駄菓子屋などとの兼業で副収入を得ることも可能となる。そうして経営が長く続けば、工夫をする店舗も現れる。

実際、今年のB-1での石巻焼きそばに加えられた出汁は、鰹節やさば節、さらにはサンマなどから抽出されていて、参加者によればこれまでより遥かにグレードアップしていたという。優勝したひるぜん焼きそばにしても、地元で愛される味噌ベースの焼きそばソース「若田のたれ」や「落合のたれ」などが切磋琢磨してきた結果、栄冠にたどり着くことができた。B級グルメ文化も、進化、継承が繰り返されることでその深みを増してきたということなのだ。

B-1でグランプリを獲得すると、経済効果は獲得後の数か月に限定しても、約30億円にのぼるという。第一回、第二回と連覇した「富士宮やきそば」などは、焼きそばで町おこしをはじめた2001年以降の経済効果が昨年時点で439 億円(静岡市のコンサルタント会社「地域デザイン研究所」試算)と、もはや500億円に迫る勢いだ。

焼きそばは、戦後の屋台に起源を持つと言われ、各地方の工場労働者や子どもたちのお腹を満たしてきた。そしてB-1に出場するような「ご当地焼きそば」のさらなる進化で「太く長く」愛されていくはずだ。ちなみに今年上位に入った、ひるぜん焼きそば、なみえ焼きそばは、ともに太麺である。

関連記事

トピックス

都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
中日ドラゴンズのレジェンド・宇野勝氏(右)と富坂聰氏
【特別対談】「もしも“ウーやん”が中日ドラゴンズの監督だったら…」ドラファンならば一度は頭をかすめる考えを、本人・宇野勝にぶつけてみた
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《体調不良で「薬コンプリート!」投稿》広末涼子の不審な動きに「服用中のクスリが影響した可能性は…」専門家が解説
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”川崎春花がついに「5週連続欠場」ツアーの広報担当「ブライトナー業務」の去就にも注目集まる「就任インタビュー撮影には不参加」
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
広末涼子、「勾留が長引く」可能性 取り調べ中に興奮状態で「自傷ほのめかす発言があった」との情報も 捜査関係者は「釈放でリスクも」と懸念
NEWSポストセブン