震災、不況、円高閉塞感が漂う時代である。「仕事が思い通りにいかない」「壁にぶちあたって前に進めない」などと思い悩んでいる人は少なくないはずだ。そんな時こそ、幾多の困難を乗り越えてきたスティーブ・ジョブズの声に耳を傾けてはどうか。彼の言葉は今なお新鮮で、とかく滅入りがちなわれわれの心を奮い立たせてくれる。ここではそんな彼の名言の一部を紹介する。
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アップルがマッキントッシュを開発中の1983年1月、ジョブズが開発チームのメンバーを集めてブチ上げたのが、次のスローガンだ。
〈海軍に入るより海賊になろう〉
ジョブズは、型にはまらず、どのようなものにも立ち向かう反逆者のような魂を持ってほしいと思ったのだ。このスローガンに鼓舞されたかのように、開発チームはゴールに向けてひた走り、1年後、マッキントッシュは衝撃的なデビューを果たす。
しかし翌1985年、創業者であるにもかかわらず、業績不振を理由に、アップルから追放される。しかし、彼はめげない。マッキントッシュよりももっとすごい製品を作ろうとしていたのだ。辞表にこう書き記している。
〈僕はまだ30歳。まだまだなし遂げたいことがあるのです〉
しかし現実は厳しかった。その後の10年間、ジョブズは何度も挫折を味わう。そんな中でアップルへの復帰話が持ち上がり、かつて追われた会社に戻ることを決意する。当時アップルは経営破綻の一歩手前だった。
〈失敗を覚悟で挑み続ける、それがアーティストだ。ディランやピカソは決して失敗を恐れなかった〉
復帰後は経営改革を断行、「独創性がない」と罵倒していた“宿敵”マイクロソフトのビル・ゲイツと手を結ぶ。
〈これから前に進み、アップルを再生するためには、捨てなければならないことがある。アップルがマイクロソフトを打ち負かすという考えを捨てなければならないんだ〉
このメッセージがカンフル剤となり、低迷していたアップルの株価は33%急騰した。2001年には世界をあっと言わせるiPodの発売にこぎ着ける。当時、開発チームの「こだわり」について聞かれたジョブズは、次のように答えている。
〈情熱がたっぷりなければ生き残ることはできない。それがないと人はあきらめてしまう。だから情熱を傾けられるアイデアや問題を持っていなければならない。さもないと、こだわり続けるだけの忍耐力が持てない。我慢さえできれば、うまくいったも同然なんだ〉
2005年のスタンフォード大学の卒業式に招かれたジョブズは、スピーチの中で自分の過去をこう振り返った。
〈アップルをクビになったことは人生最良の出来事であることがだんだん分かってきました。成功したことによる重圧は、再び初心者であることの軽やかさに変わりました。自由になれたことで、人生で最もクリエイティブな時期に、もう一度入り込むことができるようになったんです〉
ジョブズは大きな挫折を味わったからこそ、自分が何をなすべきかが分かり、より高く飛躍することができたのである。
※SAPIO2011年12月7日号