30代、40代のときに、週に2回以上運動していた人は、週2回未満しか運動しなかった人に比べて、後年にアルツハイマー型の認知症を発症する確率が半分以下になるという。
運動がアルツハイマー病の予防に効く理由は、大きくふたつ挙げられる。
「ひとつは、運動をすることによってβアミロイドを分解する酵素が活性され、アルツハイマー病の原因となるβアミロイドが分解、除去されるようになるからです」(千葉大学名誉教授・医学博士の伊藤晴夫さん)
そして、もうひとつは、脳内で“記憶の司令塔”と呼ばれている海馬という部位の神経細胞が刺激されるため。
「海馬の神経細胞は、何もしないと、年をとるごとに数が減っていきます。しかし、運動をすると、神経細胞の分化に必要なホルモンが分泌されて、海馬の細胞が増えていくのです」(伊藤さん)
最近の医学研究では、とくに次のような運動が認知症予防に効果があるとわかってきた。それは、呼吸をしながら、ゆっくりと体を動かすこと。
「息を止めて瞬間的に力を入れる筋力トレーニングなどの無酸素運動はあまり効果がありません。呼吸を続けながら体を動かすウオーキング、水泳などの有酸素運動をしましょう。というのも、運動と呼吸を一緒にすることにより、脳の血行がよくなり、多くの酸素と栄養が脳に行き届くようになるからです。記憶力、理解力、判断力など脳の機能が活性化され、ボケ予防にも効果があります」(伊藤さん)
さらに効果を上げるには、動きが複雑な運動を心がけ、頭を使うことも意識するとよいという。
「頭を使いながら運動をすることで、脳のより広い部分が活性化します。社交ダンスのような振り付けがある動きや、体の複数の部分を動かす体操が最適です」(伊藤さん)
そしてこれらの運動は、週1回6時間より毎日30分を続けることが有効だという。
「有酸素運動は毎日30分続けるのが理想。週に1回、長い時間運動をしても、脳に行きわたる酸素や栄養は限られています。毎日、脳に刺激を与えることが重要なのです。運動をする暇がない人は、掃除や洗濯などの家事を楽しい運動に見立てましょう。ゆっくり呼吸をしながら、体全体を動かすように、家事をするのです」(伊藤さん)
※女性セブン2011年12月1日号