あの引退会見から3か月、島田紳助を引退に追い込んだ「暴力団との親密メール」が流出する発端となった事件の容疑者が逮捕された。その人物とは、大阪府警西淀川署の元巡査部長の黒木晋平容疑者(40)。逮捕容疑は、暴力団関係者に捜査状況を漏らしたことなどだ。本誌10月14日号で一部を伝えたが、事件発覚から1年半、逮捕までの道のりはあまりにも長かった。
「当初は“捜査情報を渡す見返りに200万~300万円を受け取っていた”と容疑を認めていたが、後から“銀行口座に入っていたカネは知人のホステスから預かったもんだ”と否認に転じた。情報漏洩についても“何も話したくない”とだけ。結局、汚職(収賄)で立件することはできなかった」(府警関係者)
事件発覚のきっかけは昨年5月、詐欺容疑で不動産会社の元役員と山口組系I会の組長が逮捕されたことだった。元役員の関係先を家宅捜索したところ、マル暴担当の捜査員の自宅住所などが書かれた名簿が発見される。巡査部長が元役員から現金を受け取っていた疑いが出たため、捜査の中心が贈収賄事件を担当する捜査2課に移ったのだ。
「内偵捜査のために、暴力団担当の捜査資料や事件記録がごっそり捜査2課に移されたが、その捜査過程で出てきたのが渡辺二郎と紳助のメールのやり取りや、紳助と暴力団関係者との関わりを示す資料だった」(前出・府警関係者)
資料からは、逮捕されたI会組長と、紳助と交際していた組長が率いるK会の幹部が仲良く連れ立って紳助の店にも出入りしていたことなども明らかになる。そこで捜査員が、かつて吉本興業に籍を置いていた府警OBに話を聞きに行ったのだという。その時点で、捜査2課は紳助を標的には全くしていなかった。
この皮肉な巡り合わせを生んだ元巡査部長はマル暴担当を志望した熱血漢だったという。
「2000年に念願かなって府警4課に異動。『人の懐に入り込むのが上手い』と評判でした。しかし、それがアダとなった。2005年頃、暴力団の情報源として、当時はI会の組員だった元役員と懇意になると、接待などを受けるようになり、逆に相手に取り込まれた」(同前)
当時、風俗店を経営していた元役員は、黒木容疑者から警察車両のナンバー情報や捜査員の名簿を得ていた。この情報を元に、風俗の摘発などの隠密捜査をする警察車両を見つけて対策をとっていたようだ。
※週刊ポスト2011年12月2日号