日本シリーズ前日の11月11日に球界を激震させた清武英利・読売巨人軍専務取締役球団代表による渡辺恒雄・読売巨人軍取締役会長(読売新聞グループ本社会長兼主筆)への批判会見。結局清武氏は11月18日に球団から解任された。この記者会見を開いたタイミングは「日本シリーズの盛り上がりに水を差す」と一部ファンからは批判も出ていた。本誌は解任直前に清武氏を都内で直撃した。
――記者会見はなぜ、あのタイミングだったのか。
清武:毎年、巨人のすべての試合が終わった直後から(今季はクライマックスシリーズ第一ステージ)人事を進めることになっている。そのため、すでに11月1日からコーチの契約を始めていた。
(11月4日に、突如、渡辺会長が言い出したように)江川卓さんをヘッドコーチにするというのは、一軍だけの問題では済みません。一軍ベンチには定員がある。ここに一人追加すると、誰かがブルペンや二軍に行くしかない。ところが、人事は内示を終え、一軍も二軍のコーチ契約も始まっていた。それで、一刻も早く記者会見を開き、渡辺会長に指示の撤回をお願いする必要があった。日本シリーズ前のこの時期にお騒がせするのは、決して本意ではなかった。
――文部科学省で記者会見を行なった理由は。
清武:今回の問題は野球界だけの話ではないと思ったからです。オーナーと代表が決め、会長が承認されたことをツルの一声で変えようとする。これは、コーチや選手との信頼関係を基盤とする球団経営の原点に関わることですし、プロ野球界全体のルールに関わることでもある。また、企業の権力者が会社の内部統制や企業統治のルール、コンプライアンスを破ることがあってはならない。こうしたことを日本野球機構の監督官庁で記者会見することで、国民に知ってもらいたかった。
※週刊ポスト2011年12月2日号