清武英利・巨人軍GMを巡る一連の騒動。読売新聞は清武氏が解任されるまでこの問題を詳しく報じることはなかったが、ジャーナリストの上杉隆氏はこう分析している。
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今回の件で最も疑問だったのは、なぜ読売はこの問題を詳しく報じないのか、ということだ。本来であれば、読売の記者が渡辺氏、清武氏の双方に最も取材しやすい立場にある。
あれだけ表沙汰になったのだから、双方のインタビューを取り、掲載すればよかったではないか。何があったのか説明しないのは、読者のことを一切考えていない、メディアとしての驕りである。
身内が取材対象だから書かないなどということは、海外ではあり得ない。NYタイムズは、イラク戦争の「大量破壊兵器」に関する誤報検証のように、積極的に自らの誤報や不祥事、内部批判などを紙面に書いた。
だが、日本ではそれができない。その典型が、私が『週刊ポスト』で追及した官房機密費マスコミ汚染問題である。政府の公金が、政治評論家だけでなく記者クラブメディアの記者たちへも渡されていた。
私はその疑惑を追及したが、このことを取材するどころか、内部調査した記者クラブメディアですら皆無だった。疑いの目が自らに向けられたにもかかわらず、新聞・テレビはそれを黙殺した。
そうした記者クラブ体質を体現したのが、渡辺恒雄氏である。だから、こうして問題が表面化したときだけ彼を批判するメディアも、私には一緒くたにしか見えない。問題は以前から変わっていないのだから、なぜ当時から批判できなかったのか。彼に対する批判は、すぐに自分たちにもブーメランのように返ってくる。
すでにインターネットによって、何を報じなかったかも明らかになる時代であることに、そろそろ既存メディアは気づいた方がいい。
※週刊ポスト2011年12月2日号