清武英利・読売巨人軍GMの解任で内紛が続く読売グループ。読売の社内には、知る人ぞ知る「儀式」がある。新しい編集局長になって作られる最初の朝刊早版は、局長自らが会長室まで持って行く。
この日だけ深夜まで待っている渡辺恒雄氏は、何をいうでもなく、ただその早版に目を通す。こうして幹部たちは、渡辺氏が一介のサラリーマン社長ではないことを、身をもって知ることになる。
それにしても誰もが気になるのは、なぜオーナー一族でもない一介のサラリーマン会長が、独裁を続けることができるのか、という点だろう。その謎を解く鍵は、彼の資金力にあるかもしれない。
本誌は2004年9月10日号で、彼が日本テレビ放送網の発行済み株式の6.3%に相当する161万株を所有する個人筆頭株主で、その時価は265億円にも上ることを報じた(ジャーナリスト・伊藤博敏氏のレポート)。
読売新聞の最高責任者が、個人名義で日本テレビの大株主となることは慣例で、務台光雄氏、小林與三次氏(正力松太郎氏の女婿)という歴代トップから、渡辺氏はその座を受け継いでいた。
日本テレビは本誌報道を発端として、「実質保有者は読売新聞だった」と「名義貸し」を認め、有価証券報告書を訂正。さらに読売新聞は、地方のテレビ局24社とラジオ局18社、計42社の株式を、渡辺氏の名義貸しを含む第三者名義で実質保有していることを明らかにした。
現在、東京・千鳥ヶ淵の超高級マンションに住む渡辺氏の資金力の全体像は、いまだ杳(よう)として知れない。
※週刊ポスト2011年12月2日号