大阪通天閣よりさらに南、西成区山王3丁目一帯に、飛田新地という旧遊郭がある。この街と、橋下徹・前大阪府知事との間には、意外な関係があった。作家の山藤章一郎氏が報告する。
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いまも見世に坐った20歳ほどの娘が通りを行く客にほほえむ。ファッション誌に載っているような美形ぞろいである。隣りに、「にいちゃん、寄ってって」と声を嗄らす婆さんがつく。
声につられて店の2階に揚がる。薄い布団が敷いてある。美形は全部脱いで、男を楽しませる。
売春が生業の地域である。15分1万2000円。組合で値段は統一されている。『さいごの色街 飛田』(筑摩書房)のルポ取材で12年通った著者の井上理津子さんは、2009年の秋、この組合会館の応接室に通されて、「おやっ」と思うものを目にした。
西成警察署、大阪市消防局の感謝状にまじって一枚の写真が飾られていた。茶髪の男と組合長が並んでいる。
〈「あれ? これ橋下知事。『行列のできる法律相談所』に出ていたころの橋下知事ですよね?」
「そうや。組合の顧問弁護士。一回、講演に来てもろた時に写したやつやな」と幹部〉
組合幹部の名札とともに〈橋下事務所〉という札もかかっていた。講演だけではなく、すでにこのころ、橋下は〈飛田新地料理組合〉の顧問弁護士だった。
※週刊ポスト2011年12月2日号