みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、般若心経について考察する。
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三蔵法師こと玄奘三蔵が中国語に訳した『般若心経』。その中で中国語に訳さなかった“ギャーティギャーティ ハーラーギャーティ”(羯諦羯諦 波羅羯諦)の真言部分。
ここは、般若心経をひとつの曲にたとえると、まさしくサビであり、ロック的な感覚でいうとシャウトするパートのように感じる人も多いだろう。実はこの部分サンスクリット語での意味はというと、「行け行け! もっと行け!!」。英語にすればすなわち、「ゴー! ゴー!!」だ! まさしくロックのシャウト。
素晴らしいリズム感、語感、そして翻訳センス!! 般若心経を中国語に訳した三蔵法師。まさしく、この人は天才ではないかと思う。『マイウェイ』の日本語訳で、最後の♪マ~イウェ~って部分だけは英語のまま残したというのも『般若心経』の影響を受けているとすら思う。
※週刊ポスト2011年12月2日号