日本とイギリスの女子サッカークラブチームが国際試合・TOYOTA Vitz CUPでぶつかる。先日、プレナスなでしこリーグで優勝を決めて女子サッカー日本一のチームとなったINAC神戸レオネッサと、イギリスの名門・アーセナル・レディースFCだ。
W杯優勝で日本に明るい話題を呼んだなでしこだが、一次リーグで唯一負けを喫した相手がイングランドだった。すでに決勝リーグ進出を決めていたとはいえ、ベストメンバーで臨んだにも関わらず2-0という結果に終わったことは、不本意だったはず。11月30日(水)に国立競技場で開催されるTOYOTA Vitz CUPの試合は、W杯の雪辱戦ともいえる戦いとなる。
INAC神戸には、日本代表である澤穂希選手、川澄奈穂美選手、大野忍選手、海堀あゆみ選手ら代表の要となる選手が所属しているが、アーセナル・レディースFCも、ほぼ全員がイングランドやアイルランドなどの代表選手であり、ハイレベルな展開が期待できるマッチアップ。スポーツライターの戸塚啓さんは、なでしこが世界の強豪に勝ち続けるためにも、ぜひ盛り上げていきたい試合だと話す。
――女子クラブチームの国際試合はめずらしい?
「今回のように、誰もが知っている企業スポンサーがついてクラブチーム対抗の国際試合が行われるのは初めてだと思います。興奮しますね。日本の女子選手は、代表にならない限り、なかなか外国人選手と対戦できません。経験を厚くするためにも、ぜひ継続して欲しい企画です。
僕が記者として初めて取材した国際試合は、20年前のアジア女子選手権でした。その時、応援席は閑散として、選手の家族くらいしかいなかったんですよ。TOYOYA Vitz CUPは、ぜひ、なでしこサポーターで国立競技場を埋めて欲しいです」(戸塚さん・以下「 」内同)
――対戦相手のアーセナル・レディースFCはどんなチーム?
「まず、欧米チームなので、体格差が気になるチームです。アーセナル・レディースFC自体は、イングランド・FA女子スーパーリーグの優勝など、今季3冠を達成し、イングランド国内で飛び抜けて強いトップチームです。W杯の日本戦で、海堀あゆみ選手を抜いて、ゴールを揺らしたエレン・ホワイト選手、レイチェル・ヤンキー選手の2人も所属しています」
――W杯で、なでしこがイングランドに敗れた原因は?
「相手は体格が大きく、足も長い。普段は取られないボールに足が伸びてきたりと、間合いの違いに戸惑っていたようでした。もっと細かいパスがつながればよかったのですが、うまくかみ合わなかったことが敗因に。
しかし、この負けをきっかけに、なでしこたちは決勝トーナメントのむずかしい試合を制し続けて、W杯優勝を手にしました」
――その後、なでしこたちの成長は?
「プレー面よりも、メンタル面の変化が大きいですね。世界一になったことにより、いきなり高まった注目度にプレーで応えなければという責任感が、現在の彼女たちを突き動かしていると思います。負けられないし、それ以上に変なプレーは見せられないといった気持ちは、相当に強いでしょう。
しかし、なでしこの良さは、もともとメンタル的に強いところにあります。なでしこリーグの前身の旧Lリーグでは、スポンサーの撤退などの憂き目にあっているので、苦労を経ている代表選手たちは、決して浮かれるところがないと思います。」
――INAC神戸が勝つには?
「日本代表は、美しいパスプレーを得意としていますが、クラブチームには、さらに成熟したコンビネーションプレーがあります。INAC神戸には、すばしっこさを生かして細かいテンポのいいパスをつなぎ、大女を翻弄して欲しいですね。相手にボールを追いかけさせることで、メンタル面の嫌がらせができると勝機につながります。
アーセナル・レディースFCは、体格差を生かして、カウンターから攻めてくると思います。INAC神戸の選手は、高さでは勝てないので、高いボールを上げさせないこと。相手がゴール前にいれてきたボールを味方選手がクリアした際のこぼれ球(セカンドボール)を、ボランチの澤選手が確実に拾えると、守りから攻めへの展開が早くなります。
逆に、相手に攻めさせないためには、澤選手のコーチングによって、味方選手を動かし、相手のパスコースを限定することが鍵になります」
TOYOTA Vitz CUP
INAC神戸レオネッサ v.s. アーセナル・レディースFC
【日時】2011年11月30日(水) キックオフ:19:15
【会場】国立競技場
【テレビ放送】BS日テレにて、11月30日(水)19:00~21:24生中継(予定)
【入場料金】ブロック指定席2000円(メインスタンド)。自由席1000円(バックスタンドおよびゴール裏)。※自由席に限り中学生以下は無料。※料金は税込み。
【問い合わせ】東京都サッカー協会 TEL:03-5772-5599(平日10~17時)
■写真:YUTAKA/アフロスポーツ