東日本大震災をきっかけに、家族の大切さを再認識した人が多いというが、そうした思いは“旧友”に対しても同じようだ。 同窓会の幹事業務を代行するサービス会社によれば、震災後、依頼件数が倍増しているという。
「震災とそれに伴う自粛ムードの影響で3月の件数は減りましたが、今年2月までの半年間と4月からの半年間を比べると、216%増になっています」(「同窓会本舗」を主宰するアラッドブラザーズ社長・荒瀧智範氏)
同窓会をやるきっかけがなかった人たちにとって、大震災がその背中を押す力になったことに加え、フェイスブックに代表されるソーシャルメディアの隆盛も大きな要因となっているようだ。
一般的な同窓会のきっかけは「卒業○周年」とか「還暦を機に」といった“人生の節目”が多い。
「夏、還暦を機に、震災の安否確認もかねて高校時代の同窓会を開いた。自分は定年退職して仕事関係のつき合いがなくなって寂しい思いをしていたから、旧友との再会は楽しかったなぁ。役員として現役バリバリのヤツや20歳年下の女性と再婚したヤツなどいろいろだったけど、それも刺激になって、再就職先を探そうというやる気に繋がった」(60歳・無職)
その夜は4次会まで、歳も忘れて大騒ぎ。同窓会をきっかけに、登山や釣りなど同好会サークルのようなものがいくつもできたそうだ。
他にもきっかけや開き方はいろいろだ。
「母校の高校が校舎の老朽化と少子化の影響で取り壊され、他校と統合することに。そこで“学校があるうちに集まろう”と、学校の教室で同窓会を開いた。当日は恩師も招き、特別授業をしてもらいました。みんな先生に名前を読み上げられると、『はい!』と元気よく返事。一気に35年前に戻った気がしましたね」(50代・小売り)
もうすぐ消えてしまう懐かしい校舎の前で記念写真を撮り、その後、地元に残った友人が経営する寿司屋で飲み会。異様なほどに盛り上がり、以来、毎年の恒例行事になっているという。
なかには、通学に使っていた電車が廃線になるのをきっかけに同窓会を開いたという人も。
「廃線になる電車の中で集まろうということになり、決まった電車に出席者全員が乗車。『当時は、どういうわけか男子と女子が別々の車両に乗ってたね』とか『ホーム側に乗って、窓から女子に熱い視線を送ってた』なんていう、通学にまつわる思い出話に花を咲かせました。車窓から見える景色は昔とは一変してしまったけれど、わずかに残る当時のままの店などを見つけると、車内で歓声が起きていました」(70代・無職)
※週刊ポスト2011年12月9日号